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中国映画『芳華』が伝える中越戦争と中国人の心の傷

4/12(金) 12:13配信

Wedge

 ベトナムとの戦争の傷は、癒えていなかった、ということだろうか。この場合のベトナムとの戦争とは、米国のことではない。中国のことだ。通常は「中越戦争」と表記されているこの戦争は1979年に起きる。今年でちょうど40年を迎えた。

 わずか1カ月に満たない短い戦争だったが、殺された双方の兵士の数は中越双方あわせて数万人を軽く超える凄惨なものだった。かつては兄弟国としてともに社会主義をアジアに広げていく夢を抱いた同士の近親憎悪がその根底にあった。中国側は、兄貴分としてベトナムを「懲罰」するという大義名分を掲げ、ベトナムは「侵略だ」と激しく譴責した。南シナ海をめぐる中越の対立の根っこにはこの中越戦争の後遺症による両者の不信と猜疑が横たわっている。

 公開後1ヶ月で興行成績230億円という異例の大ヒットになった本作『芳華』に対して、中国で「これは傷痕映画」だと称する人もいた。中国には「傷痕文学」というジャンルがある。文化大革命によって受けた心の傷を出発点にして書かれた1970年代末期から1980年代にかけての文学のことだ。その映画版として、『芳華』は中越戦争の傷を負った人々の心を描いている、という解釈である。

 中国映画で「戦争」がテーマといえば、日中戦争、そして国共内戦だ。この2つの戦争はいずれも「勝者」の物語で一貫している。だが、中越戦争で中国は勝者とは言い切れない。その意味でも貴重な価値のある本作は日本人も見ておくべき作品だと思う。

注1= 2017 Zhejiang Dongyang Mayla Media Co., Ltd Huayi Brothers Pictures Limited IQiyi Motion Pictures(Beijing) Co., Ltd Beijing Sparkle Roll Media Corporation Beijing Jingxi Culture&Tourism Co., Ltd All rights reserved

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最終更新:4/12(金) 12:13
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