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<解説>ブラックホールの撮影成功で何がわかったのか?

4/12(金) 18:23配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

膨大なデータから見えてきたこと

 画像を手にした科学者たちは、ブラックホールの物理学の謎を深く研究できるようになった。そこには基礎の確認も含まれている。

「こうした観測から知りたいのは、ブラックホールの特性が、アインシュタインの理論から予想されるものと同じかどうかということです」とリース氏は言う。

 これまでにわかった範囲でいえば、アインシュタインの予想はどちらかと言えば正しかったようだ。アインシュタインはブラックホールの存在については懐疑的だったが、彼が1915年に発表した一般相対性理論の方程式の解は、宇宙に非常に重い天体があれば、それは球形で、光の輪に埋め込まれた黒い影のようなものであると予言していた。

 M87のブラックホールの画像はその予想と一致していた。光の輪はやや不均一で、膨らんだドーナツのように見えるが、それも予想されていた。ブラックホールのまわりを回る円盤は、その一部が私たちの方に向かって動いているため少し明るく見えるのだ。

「全体が動いているため、一部は私たちに向かってくるのです。『インターステラー』の表現は、この点で間違っています!」と、マーコフ氏は2014年のSF映画で描かれた超大質量ブラックホールとの違いを指摘した。「この画像には圧倒的なものがあります。私たちは今、時空の吸い込み穴を見ているのです」

質量は太陽の65億倍、大きさは?

 研究チームは、M87のブラックホールの事象の地平線に基づき、その質量を太陽の約65億倍と見積もった。これは、ブラックホールのまわりを公転する恒星の運動から間接的に見積もられた質量に近い。ただし、ブラックホールのまわりを公転するガスの運動から見積もられた数字と比べると、はるかに大きかった。ガスの運動からブラックホールの質量を推定する手法は、恒星の運動を利用する手法よりも容易で、より広く用いられている。この手法が不正確であるなら、科学者はその理由を明らかにしなければならない。

 米プリンストン大学の天体物理学者ジェニー・グリーン氏は、「ガスの運動に基づいてブラックホールの質量を見積もる手法は、小さい銀河から始まり、どんどん大きい銀河に適用されるようになっていきました。そろそろ、この手法を正しく調整する段階に来ているのかもしれません」と言う。

 新しいデータはブラックホールの質量を推定するのには役立つが、M87のブラックホールの事象の地平線の範囲を厳密に決めるのは少々難しい。画像を見るとわかるように、中心部の黒い円のシルエットはぼやけている。その正確な直径は、ブラックホールの回転速度や、宇宙での正確な向きなど、まだ明らかになっていない多くの要素に依存している。

 このブラックホールが私たちの太陽系にあったら、その事象の地平線は冥王星の軌道のはるか彼方まで、もしかすると、地球から太陽までの距離の120倍以上の距離まで広がっているかもしれない。

 だとすると、M87のブラックホールに落ちる人は、事象の地平線を横切った時点では何も感じないだろう。ブラックホールが大きすぎて、事象の地平線の時空はほとんど曲がっていないからだ。そこでは、M87の巨大な重力はあなたの頭の先からつま先までを同じ力で引っ張っている。しかし、さらに落ちていくうちに時空の曲がりが強くなり、あなたはひも状に引き裂かれてしまうだろう(もちろん、ここまで来れば自分の身に起きたことにはっきり気づいているはずだし、もっと早い段階で嫌な感じがしているはずだ)。

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