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民泊経営の筆者、地域の理解を獲得し町内会の会長に就任! ~金欠フリーライター、民泊をはじめる(11)~

4/13(土) 15:31配信

HARBOR BUSINESS Online

 去る2月上旬、筆者宅から徒歩45秒くらいの自治会館で町内自治会の定例会が開かれた。

 民泊を始めるために昨年8月に転居してきたこの街だが、聞くと町内会が六つの班に分かれ、ゴミ出しなどもその六つの班ごとに収集所がある。そして、以前にもご登場いただいた同年代の班長から「よろしければ四月から次の班長になっていただけませんか」という打診があったわけだ。

 そもそも転居三・四か月で何もわかっていない筆者に何ができるのか多少疑問もあり、なおかつ町内会の役職など誰もやりたくない。筆者だって可能ならやりたくない。

 しかしものは考えようである。この班長は筆者宅が千葉県知事公認の合法民泊であり、すでに何組ものゲストが泊まりに来ているのを知っている。つまりここで町内会の役職を務めれば、一気に民泊への支持をとりつけられるわけだ。筆者は班長就任に合意した。

 そして三月までの旧班長六人と、四月からの筆者を含む新班長6人の12人が顔合わせとなったのが今回の定例会だ。筆者は上野駅で購入した12個1080円の菓子折りを持参した。

 参加者を見ると新班長側に筆者を含め二人、旧班長側に一人の三十代がいる。あとは六十代か七十代だ。和室で行われた会議だが膝や腰がつらいと椅子に座っている方も多い。

 議題は、おそらく全国津々浦々の町内会全てと同じだろうが「ゴミ問題」である。これについていくつか討議したあと、次に話題になったのが「イス問題」である。

 前年度予算が約一万円手つかずで残っているという。その予算で、老人班長向けにイスを買ってくれないかという要求だった。

◆囲碁界でも主流は正座ではなく椅子

 そこで筆者は囲碁と将棋の話をした。この媒体で将棋のことを書いたら「こいつは将棋も知らないくせに」と批判がきたが、一体誰に向かって言っているのか。石田直裕五段との共著「史上初の詰飛車問題集」(主婦の友社)があるのを知らないのか。

 弱いのは事実だが、知らなければプロ棋士と共著で本など出せるわけがない。ちなみに、「藤井聡太は新人王ではなく、タイトル二つくらいとれ」と書いた筆者などまだ甘いものである。「中卒で将棋に専念し、16歳で竜王を獲れ」と言ったのは日本将棋連盟理事・森下卓九段である。

 本題に戻すが、囲碁は韓国・中国・米国・台湾など多国籍な競技ということもあり、昔から椅子対局が普通である。一方で、将棋は未だに和室に座布団で正座(もちろん、四六時中ではなく胡坐をかく時間帯もある)なので、高年棋士が膝や腰の痛みにより引退に追い込まれる場合が少なくないのだ。内藤國雄九段の引退声明がまさにそれだった。

「ひざと腰が痛く、長時間の対局に耐えられなくなった」

「正座の恨み」といえば、石原慎太郎著「弟」を読んでみるとよい。石原慎太郎は17歳で父親を喪う。長男だから喪主を務めるしかないのだが、喪主ということはずっと正座を通さなければならないということである。

 一方の弟、つまり次男の石原裕次郎はバスケットボールで膝を痛めていたため、正々堂々と胡坐をかいていて、誰も文句を言わない。あの野郎、胡坐をかけて羨ましい、なんでオレはずっと正座で足が痺れて地獄の思いをしなければならないのか……と父ではなく弟の死後二十年近くたってまだ延々と書いている。

「囲碁のほうが国際化が進み、イスがあるから棋士の人は助かっているんですよ。私はイス購入に全面的に賛成します」

 パイプ椅子の三つや四つ、買っても数千円だろう。筆者が寄付してもいいくらいだ。

◆正式な認可を得て民泊経営をしていることを話すと、思わぬ展開に

 続いて理事選任の時間に入った。六人の班長が会長・副会長・会計・総務などどれか一つを引き受けることになる。会長・会計・総務は何となくやることが想像がつくが、副会長というのは何をやるのか。

 聞いてみると、「二か月に一回くらい、金曜夜にほかの自治会とも協力してパトロール活動で4㎞ほど歩く」のだという。フルマラソン3時間18分、ほぼ毎日10㎞前後走っている筆者にはおあつらえ向きではないか。迷うことなく立候補した。

 若手としては仕事があるので平日は動くことができない。高齢者はあまり足を動かすのはイヤだ。また平日は会社勤め、週末は少年野球の指導があるので週末は動けないおじさんもいる。副会長希望者が三人いるが、要は誰も会長だけはやりたくないということだ。

 そこで筆者は持参していた自著・訳書の計三冊と千葉県知事から出されている民泊ライセンスを参加者全員に見せた。

「私、こういう本を出してまあまあ売れていて、それと並行して正式な認可を得て家で宿泊施設もしております」

 すると、明らかに参加者の筆者に対する態度が変わった。今までは何の仕事をしているかわからない「胡散臭い人」だったが、本も出していて知事のお墨付きももらっている「先生」ということになった。「私も民泊、興味あるんですよね」というおじさんも現れた。

 そこで筆者は語りかけた。

◆地元に貢献して説明責任を果たせば、民泊は受け入れられる

「私は東京の会社に通うサラリーマンではなく、原稿も自宅兼事務所で書いていますし、民泊ゲストへの応対もあり、家にいることが多いんですよ。ですから、地域活動にもできるだけ協力したいとは思っているんですよ」

 すると、現会長から衝撃の一言が発せられた。

「皆様のご希望を勘案しますと、ここは大丸さんに会長になっていただくのが一番いいのではないかと思います」

 筆者は驚愕した。班長と副会長くらいでお茶を濁そうと思っていたら、よりによって会長である。しかし、ここの参加者は筆者が民泊ホストであることを承知の上で会長就任を打診しているわけだ。つまり、今後は地域の全面支持のもと民泊ができるということだ。

「率直に申し上げて、転入してから半年たっておらず、何もわかっておりません。それから、三月の例会は海外出張のため出られません。四月の例会は、午後に法事があるため、十時開始のところを九時にできますか? それでもよろしければ、謹んで会長を引き受けます」

 一つ確かなことがある。かつて寄せられた批判コメント「仮に持ち家であっても、地域は反対する」が完全に虚偽であることが証明されたということだ。謝罪はないのだろうか。

 全てを公開し、地元に貢献して説明責任を果たせば、民泊は受け入れられるのである。

 ということで、私タカ大丸は、本年四月より、おそらく日本初の民泊ホストとして町内自治会長に就任することになった。

【タカ大丸】

 ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。

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最終更新:4/13(土) 15:31
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