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学ぶ喜び、の意味 映画『12か月の未来図』

4/15(月) 12:38配信

オーヴォ

 東大の入学式で上野千鶴子氏が、熾烈(しれつ)な競争を勝ち抜いてこの場にいるあなた方は、恵まれた環境であったからこそだという趣旨の祝辞を述べた。「がんばったら報われる、と思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持ってひきあげ、やりとげたことを評価してほめてくれたからこそ」であり、努力しても報われない人々への想像力を欠いてはいけない、と。

 公平な制度があっても、歴然と存在する格差。その中で葛藤する教師と生徒を描いたフランス映画『12か月の未来図』が公開されている。

 パリの超エリート高校で教える国語教師が、1年間、郊外の“荒れた”学校で教えることになり、今までとは正反対の生徒たちを相手に四苦八苦する。厳しく抑えつけたり、見放したり、諦めたりする教師たちの間で、彼自身が“外様”の気持ちを味わいながらも、次第に生徒たちの行動の向こう側にある気持ちに目を向け、“問題児”として退学させられそうになった一人の男子生徒と心を通わせる。

 不正を働いてテストで良い点を取った生徒をとがめず、よく頑張った、とほめ、こんなにできるなら次の課題も十分できるだろうと励ます。不正を見逃して生徒たちとうまくやっている、と理解する同僚教師に批判もされるが、それでも少しずつ自信の種が見えてくる生徒の様子を見守っていく。公平な制度を形式的に適用しても、実質的な平等は獲得できない。一人ひとりと向き合い教える、という至極当然の教育の理念を実践することの難しさが浮かび上がる。

 フランスでは、カンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞した『パリ20区、僕たちのクラス』や、“落ちこぼれ”クラスの生徒たちが、歴史教師のホロコーストの授業に魅了されていく『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』、音楽教育プログラムを通して子どもたちと向き合う『オーケストラ・クラス』など、移民が多く“教育困難校”とひとくくりにされてしまう学校が点在する地域の子どもたちと教師を扱った作品は多い。この作品の舞台も実在する中学校。生徒役も、俳優ではないホンモノの生徒たち。本国フランスで公開直前の2017年、監督との質疑応答で、実際に郊外の学校で教える教師が「ああ、またステレオタイプの映画が出るな、と思っていたら全く違った。他の映画ではほとんど描かれない現場がそこにあった」と讃えている。フォトジャーナリストの監督が2年間、この中学校に通い続け観察しながら作った作品は、まるでドキュメンタリーを見ているようだ。

text by coco.g

最終更新:4/15(月) 12:38
オーヴォ

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