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香川真司は何を思うのか? ベシクタシュで残されたわずかな時。言葉に滲む異郷での“幸せ”

4/15(月) 11:19配信

フットボールチャンネル

ベシクタシュのMF香川真司は13日、トルコリーグ第28節のイスタンブール・バシャクシェヒル戦で61分に投入。守備的な役割を求められ、2-1のリードを守りきることに貢献した。冬の移籍市場において期限付きで加入し、残り6試合。ベシクタシュで過ごす時間はわずかだが、香川真司は何を思うのか?(取材・文:本田千尋【イスタンブール】)

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●「自分は守備の選手ではない」。のぞかせたプライド

 人生で2度と手に入らない、異郷で過ごす日々――。

 4月13日に行われたスュペル・リグ第28節。首位のバシャクシェヒルをホームに迎えた試合で、香川真司は、後半の61分からピッチに入った。スコアは2-1でベシクタシュがリード。シェノル・ギュネス監督が背番号23に求めたミッションは、バシャクシェヒルのワンボランチ、エムレをケアすること。

「5番のキャプテンが、前半から非常にポゼッションする相手チームでキーになっていたので、彼がワンボランチのところで上手くセンターバックからボールを引き出して、前に配給していたので、それを上手くコントロールして5番を抑える、パスコースを消すっていうことは求められていました」

 負傷したガリー・メデルに代わった香川は、2-1のスコアを大事にしながら、与えられた守備のタスクを忠実にこなしていった。もちろん指示の範囲に留まるだけではない。ベシクタシュがボールを持てば、攻撃の選手としてゴールに向かった。

「もちろん自分が入って勝ち点3をこぼすことは、途中出場の選手にとっては一番避けたいところではありますので、そこはやらせてはいけない。ただ、自分は守備の選手ではないので、失点に絡むということはなかなかないと思いますし。それ以上に、隙あらば3点目を取りに行かなければならない、チームを助ける、得点を取りに行かなければならない…だから両方のマインドをね、上手く持ちながら、コントロールしながら、隙あらば常に狙う、っていうものは示していこうとは思っていました」

「自分は守備の選手ではない」――。その言葉の奥に、アタッカーとしてのプライドを覗かせた香川。アデム・リャイッチとのコンビネーションからループでゴールも狙った。ふわりと浮いたシュートはバーの上に外れたが、「感覚としては悪くなかった」という。

●崩さなかった「両方のマインド」

 それから試合終了の笛が鳴るまで、背番号23は精力的に動いた。引き気味にブロックを構築してカウンターを狙うベシクタシュ。前半の猛攻が嘘だったかのように、後半のバシャクシェヒルはおとなしかった。

「後ろの選手も、時間が経つにつれて相手のペースに慣れていたというか、そこまで危ない場面もなかった。前半の方が逆にあったと思うので、上手く修正できたのかなあとは思います」

 香川は前線で守備に貢献しながら、積極的に味方に指示を出し、「隙あらば3点目を取りに」行く。思うようにボールが出てこない場面も散見されたが、守備をこなした上で攻撃も仕掛ける=「両方のマインド」を崩さなかった。最終的にゴールやアシストといった目に見える結果を残すことはできなかったが、香川は最後まで走り抜き、ベシクタシュの2-1の勝利に貢献した。

 前半はバシャクシェヒルに圧倒されながら、42分と52分、いい時間帯で決め切っての逆転劇に、背番号23も充実感を覚えたようだ。

「これがサッカーなのかなあっていうことを改めて感じます。いくら悪くても、ワンチャンスで、ツーチャンスをモノにして勝ち切るっていうのも十分あり得ることなので。ましてや相手は首位のチームなので、やっぱりそれは僕たちも分かっていたのでね、彼らの力というものを。だからこそ上手く忍耐強く戦い続けた。チャンスの数もね、彼らの方が圧倒的に多かったと思う。

 ただ、しっかりと取るところを取り切ったっていう意味では、僕たちが今日は最終的な結果を手にできたんじゃないかなあと思います。後は、ホームの声援の力があったから逆転できたところはありますね」

 こうしてさながら“360度ゴール裏”と化したボーダフォン・パークに後押され、ベシクタシュは4連勝。2位のガラタサライに次ぐ3位に付け、来季チャンピオンズリーグ出場圏内に肉薄している。

●過ぎ行く日々の中でベストを尽くす以外に方法はない

 今季のスュペル・リグも残すところ、6試合となった。それはつまり、ボルシア・ドルトムントから半年間の期限付きで移籍している香川にとって、ベシクタシュの一員として臨むゲームも、残り6試合となったことを意味する。残された時間は、決して多くはない。代表ウィークが明けてなお途中出場が続き、周囲の選手との連係もまだ十分とは言い難い。

「(連係を高めるために)やれるところはトライしていますけど、それが得意な選手であったり、そうでない選手もいるので、そうではない選手にそこを求めても、なかなか厳しいと思うので、いかにその選手の特徴を見ながら良さを出し切れるか。その選手を見ながら、自分自身もどうやって良さを出すかっていうことも、選手によって変えていかないといけないところもありますし、特徴は違うので、やはり。そこの見極めはしていかないといけないなあと思います」

 ベシクタシュというチームの中で、いかに自分の「特徴」を発揮するか。あまり時間はない。だが周囲との相互理解は十分ではない。それでも香川は「焦りは特にないです」と言い切る。

「やることはやっている、やり続けるだけ。そういう変にネガティブな考えは特に持たないようにしています。スタメンから出たいっていうことは誰もが思うことで、それに対してトライはし続けますけど、ただ、やり続けることが何より大事で、後この数試合の中でチャンスは必ずあると思っている。それを逃さずに、やるだけかなあと思います」

 たしかに焦ろうが焦るまいが、残りの試合数が6であることに変わりはない。そして残りの試合数が幾つであろうと、過ぎ行く日々の中でベストを尽くす以外に方法はない。巡ってきたチャンスをモノにするため、しっかりと準備をする。

●目に見える数字以外にも大切なこととは?

 現時点で、ベシクタシュにやって来たことは、ポジティブな経験として捉えることができるという。香川の中に後悔は微塵もない。

「それは自分がそう捉えてなきゃいけないし、例え結果が出なくても、僕はこの経験だったり、この決断に対して全く後ろ向きな考えはないし、それを自分の力で、次に繋がるものにしていくだけかなあと思います。

 ベシクタシュに移籍して考えさせられるものがたくさんありますし、ましてや僕はローンの身なので、この半年でどうやって結果を残すのか、その結果を残す上で何が大事なのかっていうのを、日々問い質しながら…上手くいかないこともありますけど、いいチャレンジが、いい経験が自分にはできているなっていうのを非常に感じています」

 イスタンブールという異郷の地で、香川は、決して端的な数字に表すことのできない、得難い「経験」を積み重ねているようだ。

「日々、本当に感じさせられることが多いので、どうやって自分自身、結果を残していくのか、そのプロセスであったり、そういうものを日々問い質しながら、サッカーに打ち込めている。自分のメンタリティであったり、考えっていうものも、また違ったものに…日々刺激を受けながらやれているので、この経験は必ず次に繋がるな、とは思っています」

「サッカーに打ち込めている」――。それ以上の幸せはないのかもしれない。それだけでもベシクタシュに加入した価値はあるのではないか。もちろん「サッカーに打ち込めている」だけでなく、ゴールやアシストといった結果も重要だ。しかし、目に見える数字以外にも大切なことはある。

 異世界でフットボールを巡る思考の中に沈潜する日々は、香川を、次のまた違う世界に連れて行ってくれるに違いない。

(取材・文:本田千尋【イスタンブール】)

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最終更新:4/15(月) 12:07
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