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脱・新聞の若者離れ(2) 琉球新報、少数意見の「拡声器」へ

4/15(月) 13:41配信

オルタナ

武蔵大学社会学部メディア社会学科松本ゼミでは、春休みにフィールドワークを行い、学生たちが地方新聞社などを取材した。近年、若者の新聞離れが叫ばれているが、「新聞の若者離れ」も起きている。地方紙は存続をかけてどのような戦略を取るのか。第二弾は、沖縄県内で高いシェアを誇る琉球新報を紹介する。

近年では、デジタル事業も充実させるなど、時代に負けぬよう多くの試行錯誤を重ねている琉球新報。複雑な歴史を背景に持つ沖縄県では様々な問題を抱えている。なかでも辺野古新基地建設問題については、沖縄県民にとって特に重大な議題であり、切っても切り離すことができない問題である。この取材期間中にも県民投票が実施された。移動中の車からは、至るところに意思表示の看板や幟を見かけ、深刻さを肌で実感した。今回は琉球新報編集局デジタル担当・玉城江梨子記者を取材し、琉球新報の現状について聞いた。(武蔵大学松本ゼミ支局=鈴木 真衣・武蔵大学社会学部メディア社会学科2年)

沖縄2大紙と呼ばれる琉球新報、沖縄タイムス。その名にふさわしいほど県内では圧倒的に高いシェアを占めているがゆえに、もはや全国紙など入る隙など無いだろう。しかし、近年では地方紙も全国紙もデジタル事業に力を入れる傾向にあるため、いよいよ地方紙と全国紙の境界線が消えかかり始めている。各新聞社におけるデジタル事業の進展に伴い、沖縄2大紙は全国紙と競合関係になるのではないかと我々は危惧していた。

「インターネットが普及したことによる競争相手って、もう新聞社だけではないですよね」と玉城さんは語る。

つまり、今や新聞社間だけの競合ではなくなっているのだ。日常的にスマートフォンを手にする現代人にとって、今や新聞やテレビから情報を目にすることはほとんどない。インターネットが気軽に利用できるスマートフォンの普及によって、琉球新報だけに限らず、多くの新聞社は新聞以外のメディアと戦わなくてはならなくなった。

地方紙が持つ特性というのは、その土地に住む記者が書いていることにあるという。地方紙の記者は、同じ場所へ何度も取材の交渉をするなど、取材先に心を開いてもらうための時間を惜しまない。その結果、全国紙にはない県民のリアルな心情を載せることができるのだ。これが全国紙との差別化になっていると玉城さんは語る。

琉球新報は2009年2月末で夕刊を廃止している。玉城さんいわく、夕刊廃止にともなう経営面での変化よりも、書き手である記者の生活リズムの変化の方が顕著であったという。朝刊単独紙への移行によって、廃止以前にはあった速報への緊張感を維持しづらくなっているとのことだ。また、以前まであった夕刊特有の紙面を書くことができなくなったことも、玉城さん自身にとっては大きな影響があったという。

アメリカ統治時代には、『沖縄時報』という新聞が台頭したことがあった。それは、革新的な論調の二大県紙に対抗的な姿勢を持つ、保守派の地方紙であった。現在、八重山諸島の地元紙である八重山日報はそれと同じく保守的な論調で報じている。

石垣島に本社を置くこの八重山日報は、近年の不採算により2019年2月末で本島版の紙媒体を廃止し、デジタル版のみの展開にするのだという。保守派の新聞が誕生したとしても、コストの面で経営が難しくなることで長くは続かないのが現状だと玉城さんは語る。

琉球新報は、「自ダネ」といわれる新聞社独自の記事が紙面の約8割を占めているため、共同通信などの記事を掲載する割合が低くなっている。同じ共同通信を利用する沖縄タイムスとの棲み分け等は特にしていない上にどちらも似た論調であることから、2紙はまるで兄弟のようだと言われることもしばしばあるそうだ。

琉球新報の東京支社に駐在する記者は、主に基地問題や沖縄県人会に関する記事を担当しているという。沖縄にはない本土からの視点や論点を探る動機ともなれば、全国にある県人会を繋ぐ架け橋とも言えるため、これからも重要な存在になっていくだろう。

1996年に始まった琉球新報のデジタル事業だが、当初はホームページの開設から始まった。地方紙の中でもかなり早い段階で記事を配信するようになった琉球新報ではあるが、90年代後半から収益の低迷に悩まされることになったという。

以降、2012年に電子新聞をリリースするなど様々な策を巡らすことになった。2016年には、玉城さんを始めとするメンバーが「琉球新報Style」というウェブページを開設した。従来の堅苦しい新聞のイメージを払拭すべく、若者や女性に向けた記事をメインに配信し始めたのだという。

同年9月からはLINEニュースでの配信も始まっている。紙面に載せるか、LINEニュースに載せるかによって読者の記事の読み方が違ってくることを実感しているのだと玉城さんは言う。

新聞の若者離れは進み、新聞購読者数は年々減る一方だ。その現状を受け止めるなかで、玉城さんはこのように語っている。

「新聞紙が昔のように右肩上がりに伸びることはないと思いますし、部数は減っていくでしょう。しかし、新聞社、なかでも記者の役割は今後も無くならないと思います。媒体が変化していくだけなので、今後も必要とされるニュースは変わらないのだと思います」
 
ニュースの需要はどの時代でも変わらない。だからこそ、新聞以外のメディアにおいていかに人々へ情報を伝えていくかが新聞社に問われる今後の課題となっていく。

琉球新報が行うローカルジャーナリズムにおける工夫としては、SNSのハッシュタグを利用した質問受付やLINE@で読者の声を聴くといったことだ。実際に記者がその疑問に答えるコーナーが設けられたりするなど、インターネットを利用した読者との繋がりを重視しているのだという。

地方紙としての役割、それは時にローカルジャーナリズムの担い手としての社会的使命であることがある。

「地方紙に限らずこれからの新聞社は、ただ出来事を伝えるのではなく、読者を通して少しでも地域に還元しようとしなければならばならない」と玉城さんは語る。

誰もが気軽に意見を発信できるようになった現代だからこそ、人々の意見が反映されるシステムも作っていかなければならない。たった1人の意見の中から、誰も気が付かなかったような大きな問題を発見することができるかもしれないからだ。

いつも我々の手元に情報があることに併せて常にそれを疑い、読者と共に真偽を確かめていく姿勢が現在の琉球新報にある。独自性を含む新しいニュースの発信も大切だが、まずは読者と向き合い、情報そのものに対する考え方を確立していかなければならない。

地方紙としての琉球新報が今後どう動き、地域や読者へ還元していくのか、これからの展開に注目したい。

最終更新:4/17(水) 13:37
オルタナ

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