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英国人YouTuberクリス・ブロードが語る“日本の魅力” 「実際に住む外国人が声を上げていくことはとても大事」

4/15(月) 7:51配信

リアルサウンド

 仙台を拠点に、クリエイティブな映像で日本の魅力を発信し続ける、イギリス人YouTuberが注目を集めている。その名は、クリス・ブロード。YouTubeチャンネル「Abroad in Japan」は国内外に多くのファンを抱え、登録者数は120万人を超える。

【クリス・ブロード氏が見た日本の写真はこちらから】

 昨年10月には、自転車で日本を縦断する大型企画をスタートさせ、名所から知られざる秘境まで、日本が持つユニークな魅力を発掘し、海外に届けた。現在は日本在住の外国人トップインフルエンサーが結集し、「Uncovering Japan to the World -日本人も知らない「Nippon」を世界の片隅まで!-」をテーマに発信を行なうクリエイターコミュニティ「Tokyo Creative」でも活躍する彼に、来日のきっかけから、外国人目線から見た日本の特徴、実際に住んでわかったその魅力まで、じっくり話を聞いた。(編集部)

■映画『おくりびと』に感銘を受けた

ーークリスさんは山形県在住で、非常にクリエイティブな映像で日本の文化を世界に発信しています。そもそもなぜ、母国のイギリスから日本に来てみようと考えたのでしょうか。

クリス:アジアの文化に関心があり、そのなかでも日本はユニークな文化や特色が多く、大学時代から住んでみたいと考えていました。特に日本語専攻などではなかったのですが、レポートを書くときに「敬語」というものにフォーカスして調べてみたら、人を尊重するという文化が非常に面白く思えて。そこからより深く日本を知りたいと思うようになりました。

ーーなるほど。動画からも伝わってくることですが、アニメーションなどのポップカルチャーより、さらに根底にある文化に関心を持ったと。

クリス:そうですね。オタクカルチャーにはあまり興味がなくて、エンターテイメントの分野であれば、映画『おくりびと』に感銘を受けました。実際に英語教師として山形に来たとき、そのロケ地だと知って運命的なものを感じました。

ーー偶然だったんですね。クリスさんが山形の高校に赴任されたのは、2012年。YouTubeで日本のことについて発信するようになったきっかけは、どこにあったのでしょうか?

クリス:10代のころは映像作家になりたかったんですけど、その夢は諦めてしまっていて。そんななかで日本に来てみると、ごく普通の日常生活、自分の周りで起きることのすべてが新しくて、これを映像としてシェアしたい、と思ったんです。最初は家族や友人に、日本での生活を伝えるところから始まって、諦めていた夢に向かって、もう一度がんばってみよう、と思えるようになりました。

ーー映像からは、日本人でも深く知る人が多いとは言い難い、東北地方の魅力がしっかりと伝わってきます。

クリス:仮に日本のガイドブックを買ったとすると、90%は東京や京都の情報で占められていて、東北は本当にパラパラと掲載されている、という感じです。けれど、自分が住み始めて、いろいろなところを回ってみて、本当に美しい風景が多かったので、それをもっとみんなに知ってほしいと思いました。YouTubeでシェアすることで、外国人観光客の方が、東北という美しい地域があるんだということをディスカバリーできたらいいなと。

ーー2012年というと震災の直後で、海外の方から見ると、少し怖い印象もあったかもしれません。

クリス:そうですね。インターネットで出回っている情報はネガティブなものが多いのですが、実際に暮らしてみれば、危険なエリアは限定的なんです。それ以外の場所は安全だし、魅力的なんだということをきちんと発信していきたいと思いました。実際に動画を上げてみると、やっぱり何も知らない外国の人から、「本当は危険なんじゃないか?」と疑うようなコメントが書かれたりもして、少し苛立ちを覚えたこともありましたね。「そんなことはないんだよ」ということをきちんと誰かが発信していかないと誤解され続けてしまうので、実際に東北に住む外国人が声を上げていくことは、とても大事だと思っています。

ーー情報のリテラシーに通じる部分だと思いますが、クリスさんは学生の頃から、「自分の目で確かめる」という性格だったのでしょうか?

クリス:そうだと思います。福島の状況についてもきちんと自分で調べて、安全だと確信を持って言えるようにと。そういう性格なんですよね。

ーーそういう部分が、動画のドキュメンタリーとしてのクオリティにつながっているのかなと想像しました。

クリス:確かに、いつも動画を作るときには、自分の目で、まだ知られていないところを発見するんだ、というところを大事にしています。特にYouTubeでは、流行りのスポットなど、多くの人が同じトピックを取り上げがちなのですが、そこは自分の視点できちんと掘り下げる作業をしていますね。

ーーそうしてアップされた動画が、国内外で大きな人気を獲得するようになりました。なぜ、ここまで広く動画が受け入れられたと思いますか?

クリス:編集がカギかな、と思います。特に2012年ごろはブログスタイルというか、ただ映像を撮って日常を紹介するような動画が多くて、そのなかで、僕はテレビ番組のように構成を考えて、ドキュメンタリーを撮っていくという意識でやっているので。その場で臨機応変に、というのもYouTuberの魅力だと思いますが、僕はほとんどの場合、言いたいことがきちんと言えるように、スクリプトを書いてから撮影を始めるので。撮影からアップまで、3日くらいはかかりますね。

ーー非常に凝った映像も多く、3日でも速いと感じます。

クリス:経験ですね。昔は一本の動画に1ヶ月かかることもありましたから(笑)。

■「日本人」というテーマで映像を残したい

ーードキュメンタリー的な映像もそうですが、「日本での12つのしてはダメな事!」(12 Things NOT to do in Japan)という動画が1000万再生を超える大ブレイクを果たしました。「歩きながら飲食してはいけない」「チップを払ってはいけない」「自分を主張しすぎてはいけない」「明らかに車がいなくても赤信号で渡ってはいけない」など、外国人はもちろん、日本人にも新鮮に届く内容です。日本に来て、クリスさんが特に印象的だったことをあらためて聞かせてください。

クリス:本音と建前にギャップがあるところは不思議だと思いましたね。イギリスでは、自分の意見が言えなかったり、ためらったりということがあまりないので。ですから、日本に来て1~2年、英語の先生をしていた時代は、「この人が本当に伝えたいことはなんだろう」と読み取るのが大変でした。例えば、半袖のシャツを着ていて「寒そうだね」と言われたとき、遠回しに「長袖を着たほうがいいよ」と言ってくれているのだ、ということが最初はわからなくて。なぜ直接的に言わないのか、と不思議に思いましたが、ポジティブに考えると、自分の発言に気をつけて、調和を保つ文化ですよね。イギリスやアメリカだと、言い合いのケンカをよく見かけますが、日本では見たことがありませんから。一方で、コミュニケーションに時間がかかるので、効率的に物事を進める上ではマイナスになっているかもしれません。もっと早くいろんなことができるんじゃないか、と思うこともあります。

ーー日本に限らずどの国もそうですが、旅行者として訪れる場合と、実際に住む場合には、印象はだいぶ異なると思います。その点はいかがでしょう?

クリス:そうですね。2週間の旅行であれば、日本はちょっとクレイジーで、おかしな国に思えるでしょう。例えば、「ラブホテル」という文化はイギリスにはありませんから、とても不思議だったり。でも、実際に日本に住んでみると、特に都市部は家が小さく、プライバシーを保つのが難しいとか、そういう背景があることが見えてくる。カプセルホテルも、旅行者は「なんでこんなに狭いところで寝るんだろう?」という興味を持ちますが、しばらく過ごせば、スペースがない日本で、効率よく人が宿泊するための施設なんだとわかります。また、「すみません」という言葉が多く聞かれることに、旅行者は「日本人は丁寧すぎる」「何に謝っているんだ」と驚きますが、偉そうにすることを美徳とせず、「へりくだる」という文化がわかってくれば、自然に思えてきますね。クレイジーに見えることにも、一つひとつ背景があるということがわかるので、そういうことも伝えています。

ーーまたクリスさんと言えば、Tokyo Creativeのクリエイターメンバーと旅した自転車での日本縦断企画が大きな話題になりました。特に印象に残っているエピソードを教えてください。

クリス:美しい風景という意味では、瀬戸内海を臨むしまなみ海道、阿蘇山が見える大観峰展望所が素晴らしかったですね。岡山で道に迷ったとき、お店に入ると4人の女性がいて、柿をたくさんくれたのも記憶に残っています。

 それと、今回は自転車で陸路をまわることで、街と街の間ーー広く知られていない「なんでもない道」を通ったのですが、そういうところがきれいでしたね。「目的地」よりも「過程」というか、名も知らぬ場所でいろいろな経験をすることができたのが、とてもおもしろかったです。だから「ここがよかった!」と言いづらいんです。

ーーガイドブックではわからないところですね。

クリス:そうですね。新しい発見ばかりでした。

ーー詳しくは動画を見てもらいたいと思います。最後に、クリスさんの今後の目標についても聞かせてください。

クリス:YouTuberとしての目標とは離れるかもしれませんが、フィルムメーカーとして、自分が見てきた素晴らしい日本の姿をもっと掘り下げた映像で、コンペティションに参加するなど、挑戦していきたいと思います。また、これまでの動画では、食に関するスポットなど、場所についてはカバーしてこられたのですが、「人」にフォーカスしたものを作ったことがあまりなかったので、「日本人」というテーマでも映像を残せればと考えています。これまでに出会うことがなかった人とも出会いながら、日本のいいところを海外に知ってもらうためのドキュメンタリーを作っていきたいですね。

橋川良寛

最終更新:4/15(月) 10:59
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