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コスメ業界を一変させる大発見をした名研究員に訊く「美白の科学」

4/15(月) 11:01配信

現代ビジネス

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化粧品業界といえば、多くの理系学生が志望する人気業界。日々進化する化粧品の開発に携わることができたら……と夢見る人は多いのではないでしょうか? 
このたびリケラボ編集部では、ポーラ・オルビスグループの研究・開発・製造を担うポーラ化成工業にスゴイ研究員さんがいらっしゃるとのウワサをキャッチ。突撃取材を敢行することに! 独自の観点で美白を追求し世界的な新発見をされた、本川智紀さんにお話をうかがうことができました! 

本川さんは、美白に関する研究において世界的な学会で最優秀賞を受賞されたり、ポーラが誇る美白化粧品『ホワイトショット』の進化につながる発見をしてきたすごい人です。

本川さん! どうしたらすごい発見ができますか? 研究者としてどんなことを心がけていますか? 研究員になる前はどんな道を歩んできたのですか? 気になることを根掘り葉掘りお聞きしました! 
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常識を打ち破ってみたら大発見につながった

 ──本川さんは、美白研究の世界で知らない人はいないほどの第一人者でいらっしゃいますが、まずは、入社されてから現在までのお仕事について教えていただけますか? 
 入社してからこれまでの20年ほどで、大きくわけると3つの立場で仕事をしてきました。

 1つ目は、基礎研究。シミの原因やメカニズムについてなど、主に美白に関する研究です。2つ目は商品の開発。基礎研究から得られた知見をもとに商品を作ります。私は、美白化粧品『ホワイトショット』を担当していました。3つ目は、世の中への発信。学会での発表のほか、たとえば取材や記者発表で商品についてお話しします。販売員の方に商品の性能や特徴を説明することもあります。

2018年2月に発売した『ホワイトショット CXS』

 ──幅広い領域に携わられてきたのですね。

 そうですね、とくに発信の面では、うまくわかりやすい言葉にできないと、自分の考えが正しく伝わらなかったり、やってもらいたいことが進まなかったりします。そのため、「伝える」大切さや難しさは入社してから特に実感し、努力しました。

 ──シミのメカニズムの研究では、世界的な化粧品学会で最優秀賞を受賞されたすごい実績をお持ちですが、どんな発見をされたのか改めて教えていただけますか? 
 従来のシミの研究は、シミの原因であるメラニンを「作らせない」ことを目的に行われてきました。つまり、メラニンが「どうやってできるのか」といった点に着目されることが一般的だったんです。でも、視点を変えて研究を進めた結果、細胞の構造にフォーカスした新しい発見をすることができました。

 もう少し詳しくお話ししますと、シミの原因となるメラニンは「メラノサイト」という細胞でつくられた後、周りに分配され皮膚中に蓄積していきます。そのため、「メラノサイトのメラニンを生成するしくみ」に着目することが美白研究の常識でした。

 しかし、皮膚を3D的に俯瞰して眺めてみると、シミ部分においてメラノサイトからたくさんの手が伸びていたのです。ここからシミ形成に関わっているのは、メラノサイトから手が生えたように伸びている「デンドライト」という構造も重要であるという示唆が得られました。

 その後の研究で、デンドライトの数の増加がシミの形成に重要なこと、およびこのデンドライトの数を増やす「アドレノメジュリン」という因子を見つけて、2012年に『IFSCC(国際化粧品技術者会)』で賞をもらうことができました。

 ──これまでの常識にとらわれない視点が大発見につながったのですね! ほかにも、従来とは違った視点で研究に取り組んだ結果得られた発見などはありますか? 
 たとえば、「セルフクリア機能」もそうですね。これは「ヒトが本来持つ力を引き出して美白につなげられるのでは」という視点のもと研究を進めて発見したもの。デンドライトによって受け渡され集まったメラニンが表皮細胞によって分解されるという、人間に備わった機能のことなんです。

ポーラ化成工業横浜研究所

 ──従来とは異なる視点で研究しようという意識は、どうして持つようになったのですか? 
 プラスアルファの発見をしたいという想いがあるからでしょうか。「自分にしかできない発見をしたい」「誰も知らないことを見つけていきたい」という気持ちが軸になっているのだと思います。

 そのため、与えられたテーマを越える「問い」をいつも考えて、研究に向かっています。「自分にしかできない新しい世界を創ろう!」という感じですね。

  ──それがいろいろなチャレンジにつながっていくのですね! 

 研究成果を活かして新たに遺伝子解析事業にチャレンジしたり、ヒトだけでなく霊長類でシミの遺伝子の動きを見てみたり、進化の過程でシミの遺伝子がどんな変化をしてきたか調べたり、古代人の肌を研究してみたり……。

 いろいろな研究をしてきました。もちろん、うまくいったものも、いかなかったものもあります。

 ──縄文人と弥生人のどちらをルーツに持つかでシミができやすかったりできにくかったりするという研究、とても面白いなあと思いました。これは、もはや化粧品研究を超えて人類学や考古学の領域ですよね。

 もちろん自分一人じゃできないので、社外の専門家の方にお話をさせてもらって協力をお願いすることも多いです。古代人の研究は国立科学博物館をはじめ多くの専門の先生にご協力をお願いしたのですが、ありがたいことに、こちらの熱意を伝えるとみなさん暖かく迎え入れてくれるんです。

 そのほかの研究も、業務の範囲を超えて自主的に進めることがしばしばあるのですが、お昼休みなど合間の時間に研究室や設備を使わせてもらえるのは、会社からのサポートとして感謝しています。

縄文人(左)と弥生人(右)のイメージ。 日本人は縄文人と弥生人の2種類の遺伝子を受け継いでいると言われ、縄文人型のほうがシミのリスクが高いのだとか。

 ──やりたくて始めたことでも、本業との両立の問題もありますし、必ずしも期待通りの結果が出るとは限らないわけで、大変なことがたくさんあったと思います。それでもチャレンジを続けてこられた、モチベーションを保つ秘訣は何でしょうか? 
 妄想することです(笑)。うまくいったときにみんなが驚く様子を妄想するのが一番のモチベーションな気がします。

 私は学生時代にあんまり成功した体験がなくて。大学での勉強も、大学院での研究室配属も、思ったようにいかなかったんです。だから、「自分がやりたいことにチャレンジできる」というのがとてもうれしくて、それ自体がモチベーションにつながっているともいえますね。

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最終更新:4/15(月) 11:01
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