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銃殺された人気ラッパーが温めていた意外な夢

4/15(月) 6:00配信

東洋経済オンライン

 4月11日、アメリカ、プロバスケットボールリーグ・NBAのレイカーズなどが本拠地とするカリフォルニア州ロサンゼルスのステイプルズ・センターで、3月31日に銃撃事件で亡くなった人気ラッパーのニプシー・ハッスル氏を追悼する催しが開かれた。2019年のグラミー賞にノミネートされた33歳のハッスル氏は、自らが育ったコミュニティの再生に挑んだ若きラッパーだった。

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 ハッスル氏の命を奪った銃撃事件は、同氏が生まれ育ったロサンゼルス南部で、自らが経営するアパレルショップの前で起こった。全米規模での成功をつかみつつあったハッスル氏は、リッチな生活を享受するよりも、成功の果実を地元に還元する道を選んだ。悲劇の舞台となったアパレルショップへの投資は、その象徴だった。

■一帯を商業施設を備えた集合住宅にする計画

 ハッスル氏の地元であるロサンゼルス南部(旧サウスセントラル)は、黒人やヒスパニックが多く、ロサンゼルスでも貧しい地域のひとつである。1965年のワッツ暴動や、1992年のロサンゼルス暴動の舞台であり、クリップスやブラッズの発祥の地として、ギャングの抗争が繰り広げられてきた歴史もある。かつては近隣に日系人が多く住む地域があったが、近年では旅行者が足を踏み入れるのもはばかられるほど、治安の悪い地域として知られてきた。

 ハッスル氏が挑んだのは、そんな地元の再生だった。ハッスル氏は、アパレルショップを開設するだけでなく、ショップが入った一角の商店を買い取っていた。一帯を、商業施設を備えた集合住宅に再開発し、そこに貧しい住民向けの住宅を組み込む計画だった。

 目指したのは、貧困に苦しむ地元の開発を、外部の業者等に託すのではなく、地元住民の投資によって進める手法である。その背景には、アメリカで深刻化する「ジェントリフィケーション」の問題がある。

 ジェントリフィケーションとは、都市周辺の開発が急速に進み、不動産価格の高騰などによって、昔からの住民が追い出されてしまう現象である。同じカリフォルニア州のサンフランシスコ周辺などで顕著な現象であり、アマゾンの第二本社建設にニューヨーク市の住民が反対した背景にも、ジェントリフィケーションへの警戒感があった。

 ジェントリフィケーションの影は、ロサンゼルス南部にも忍び寄っていた。同地域には、ロサンゼルス国際空港から伸びるLRT(次世代型路面電車システム)の建設が決まっている。一部では、ジェントリフィケーションを予感させる開発ブームがみられる一方で、開発の波に乗り遅れそうな地域には、さらに貧困に沈みかねない危惧がある。

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最終更新:4/15(月) 6:00
東洋経済オンライン

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