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メイ首相はそれでも「自らの手で離脱」を諦めない

4/15(月) 11:00配信

日経ビジネス

 EU(欧州連合)は4月10日、首脳会議を開き、英国がEUを離脱する期限の再延長を認めることで合意した。4月12日に「合意なき離脱」となる事態は回避された。新たな離脱期限は10月31日となる。

 今後の展開について、慶応義塾大学の庄司克宏教授は「テリーザ・メイ首相は10月の期限に向けて、自らが提唱してきた協定案を通すことに全力を注ぐ」とみる。同首相は、自らがEUと合意した離脱協定案を議会が可決すれば辞任する意向を表明している。この方針を貫く。辞任説も浮上しているが「辞めるなら、もうとっくに辞めている」(庄司教授)。

 この協定案をめぐって1月15日に行われた最初の採決は賛成202、反対432。英近代史上、最大の票差で否決された。だが、3月29日の3度目の採決では「賛成286、反対344」にまで差が縮まった。50人の差をひっくり返せばよいところまできている。

 課題は野党・労働党といかに妥協して、この差を埋める賛成票を確保するかだ。メイ首相はこれまで、自分の案を可決しなければ「合意なき離脱になるかもしれない」などと“脅し”をかけることで賛成を求めてきた。だが、労働党のクーパー議員の法案が通ったことで「合意なき離脱」は選択肢から消えており、もう“脅し”は効かない。

 妥協案として浮かぶのは、①EUとの関税同盟を協定案に盛り込むこと、もしくは②国民投票のやり直しだ。①は労働党の主張を取り込む。この点についてEUは扉を閉ざしていない。保守党内から反発する声が上がるのは必至だが、「『関税同盟』を他の表現で言い換えることで切り抜けられる可能性はある」(庄司教授)。

 再国民投票も労働党議員の多くが求めているもの。選択肢としてメイ首相案、労働党案、離脱中止などが考えられる。同首相はこれまで新たな国民投票に反対の姿勢を示してきたが、「こだわりは徐々に捨ててきた。労働党とも協議に入った。離脱通告の撤回まで口にしている」(同)。

 総選挙によって国民の信を問うという選択肢もあるが、庄司教授はその可能性は低いとみる。解散をするためには下院議員3分の2の賛成票を得る必要があるからだ。政権を手放したくない保守党議員の賛成を得るのは難しい。あえて、不信任案を可決させる“裏技”もあるが、少数与党であるメイ政権と連立しキャスチングボートを握る民主統一党(DUP)は賛成しない公算が大きい。

 10月31日の期限を再再度、延期する可能性もなくはない。しかし、12月になれば、メイ首相は保守党党首の資格を再び問われる懸念が生じる。メイ首相にこれ以上の「後」はない。

森 永輔

最終更新:4/15(月) 11:00
日経ビジネス

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