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フットボールIQの正体――すべては「首振り」から始まる

4/16(火) 21:03配信

footballista

TACTICAL FRONTIER――進化型サッカー評論

サッカー戦術の最前線は近年急激なスピードで進化している。インターネットの発達で国境を越えた情報にアクセスできるようになり、指導者のキャリア形成や目指すサッカースタイルに明らかな変化が生まれた。国籍・プロアマ問わず最先端の理論が共有されるボーダーレス化の先に待つのは、どんな未来なのか? すでに世界各国で起こり始めている“戦術革命”にフォーカスし、複雑化した現代サッカーの新しい楽しみ方を提案したい。

文 結城康平


 バルセロナの名手シャビは「フィジカルに支配されていた」中盤のエリアを制圧し、ヨハン・クライフの理想を体現するフットボールの核となった。彼らのようなトップレベルのMFは技術的な正確性に加えて、「優れたフットボールIQ」を称賛されている。正しいタイミングで、正しい選手にボールを配給することは、キック自体の精度と同じくらい重要なのだ。クライフは「私のテクニックと優れた視野は、コンピューターでは見つけられないものだ」と述べているが、確かに当時の技術力では「はるか上空から見下ろすような視野」を誇ったトータルフットボールの申し子を評価するのは難しかったに違いない。しかし、近年の科学的な発展によって抽象的な表現に過ぎなかった「フットボールIQ」を読み解く試みも存在する。プレドラグ・ペトロビッチ氏によれば、イニエスタとシャビに神経心理学的なテストを受けさせた結果、彼らの「問題解決能力」や「判断力」は傑出していたという。そして、同様に高いスコアを記録したのが「情報収集能力」だ。当然だが、正確に情報を収集しなければ、それを精査することも難しい。

意思決定の3つのフェーズ

 ノルウェーの心理学者Dr.ゲイル・ヨルデは、フットボールにおける「意思決定」を3つのフェーズに分割した。1つ目は、「視覚による知覚」。視野に入ってくる情報を収集し、解釈する能力だ。2つ目は、「探索的行動」。積極的に状況を把握し、情報を収集する能力を指す。最後が「予測」。これは収集した情報から、数秒後の状況をイメージする能力になる。

 彼は「探索的行動」に着目し、選手の首振りをテーマにした研究を開始した。その研究によれば、当時プレミアリーグで最も「探索的行動の頻度」が高かったのはチェルシーのフランク・ランパードだった。英国屈指のMFとして知られ、献身的な上下動と高い得点能力で知られた名手は、1本のパスを受ける前に「平均0.62秒」の探索的行動によって情報を収集していた。エリア内に的確なタイミングで侵入し、ゴールを脅かす彼のプレーは「高精度の情報収集」によって支えられていたのだ。スティーブン・ジェラードも同様に高いスコアを記録しており、広い範囲を動き回るタイプのMFは優れた「情報探索能力」を武器にしていることがわかる。ちなみに、「ピッチを常に見回して、スペースを探し続けている」とインタビューで語ったシャビは「平均0.83秒」という圧倒的な成績を残した。

 彼の研究において、「探索的行動」は以下のように定義されている。

 「ボールを保有した際のアクションに繋がる情報を得ようという意思によって、ボールの存在する方向以外を把握しようとする、身体や頭の動き」

 元イタリア代表のアンドレア・ピルロは同様にピッチ全体を見回すような広い視野で知られているが、常に緩やかに移動しながら首を振っている。現在の選手で言えば、マンチェスター・シティのケビン・デ・ブルイネはセントラルMFで起用されたことでピッチの全容を把握する能力を飛躍的に向上させた。2018年12月19日、リーグカップのレスター戦のゴールは象徴的で、相手SBを「オーバーラップした味方のスペースを見る」ことで牽制し、戻ってきた味方MFのベクトルを利用するようにダブルタッチで切り返し。視野の外から追いかけてくる選手を利用するようにスペースを創出し、ミドルシュートを決めた。トップスピードでのドリブル中に味方の位置を把握し、難しいパスを容易く選択することがデ・ブルイネの異能であり、彼の視覚による知覚からの「予測」と「実行」のスピードは他を寄せつけない。

 同時に戦術的な知識は「味方の位置」と「相手の位置」の情報を無意識のうちに捕捉し、選手の判断速度を高める役割を果たしている。認知心理学者も「熟練者は環境から得られる情報の取捨選択能力に秀でており、必要ではない情報を削ぎ落とすことによって高精度の予測を可能とする」と述べている。「情報の削ぎ落とし」は、ポジショナルプレーのような原則の役割とも解釈することができる。

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最終更新:4/16(火) 21:03
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