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2019年4月のおすすめ映画

4/16(火) 16:15配信

nippon.com

混乱の世をばくちで生き抜こうとする青年。振り向いてくれない彼に会うためなら恋敵だって利用する女子。他人の願いを叶える代わりに法外な行動を要求する男。牧師の父に入れられた矯正施設から逃げ出すゲイの息子…。人々の行動の背景にあるさまざま動機や決意を感じ取って、新しい時代の一歩を踏み出したい。平成最後の月に公開の映画から4本をピックアップ。

麻雀放浪記2020

戦後の焼け野原で麻雀に全てを賭けて生きる男たちを描き、人気を博した小説『麻雀放浪記』。「昭和最後の無頼派」と呼ばれた直木賞作家、色川武大(1929-1989)が阿佐田哲也名義で書き、1984年に和田誠監督の手で映画化された作品が、平成の最後になって近未来を舞台にリメイクされた。昭和の雀士(じゃんし)が2020年にタイムスリップしてAI搭載アンドロイドを相手に「麻雀五輪」で死闘を繰り広げる、という仰天の設定。鬼才・白石和彌監督が痛快なブラックコメディーに仕上げた。

すでに高い評価を受け、熱烈なファンも少なくない作品の再映画化だけに、スタッフ、キャストとも相当なプレッシャーを感じたことが想像できる。それをはねのけるには並々ならぬ熱量で現場に臨んだに違いない。気迫が画面から伝わってくるようだ。出演者のピエール瀧がコカイン所持容疑で逮捕され、公開が危ぶまれたが、多くの人々が情熱を注いだ労作を封印しなかったのは英断だった。

昨今では珍しく、宣伝らしい宣伝がなかった作品ながら、全編iPhoneで撮影したという大胆な試み、いわゆる「きれいな顔」の出てこない濃厚な個性が勢ぞろいするキャスト陣、と興味をかき立てる要素には事欠かない。だが、何といってもこの作品の魅力は設定の妙だろう。小説を原案として人物設定に取り入れながら、その登場人物たちが放り込まれる時代と状況の設定は、突き抜けた想像力の産物と感嘆するほかない。奔放に展開するストーリーでありながら、実社会のさまざまな歪みが戯画化され、観客の心に突き刺さってくる。

映画を見終わって劇場を出ると、目の前に広がる街の風景が、斎藤工演じる未来へやってきた昭和人の目に映った世界と重なって見える。私たちの多くは、目まぐるしいスピードで移ろう時代から置き去りにされているのだ。お仕着せの価値観に従って急いで判断するのではなく、魂の欲するものにじっくり耳を傾け、勝負の一瞬に渾身(こんしん)の一手を打てばいい、そんなメッセージが聞こえてきそうな映画だ。平成が昭和の残り香を漂わせたまま終わろうとする今だからこそ見ておきたい。

作品情報

・出演=斎藤工、もも(チャラン・ポ・ランタン)、ベッキー、的場 浩司、岡崎 体育、ピエール瀧、小松 政夫/竹中直人
・原案=阿佐田 哲也(文春文庫刊)
・監督=白石 和彌
・脚本=佐藤 佐吉、渡部 亮平、白石 和彌
・企画=アスミック・エース 
・制作=シネバザール 
・配給=東映
・製作年=2019年
・公開日=2019年4月5日
・上映時間=118分
・公式サイト=http://www.mahjongg2020.jp/

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最終更新:4/17(水) 10:40
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