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中国の不動産政策、全面的政策転換の可能性は?

4/16(火) 10:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

中国当局は「高レバレッジ(高債務依存)からの脱却(去杠杆)」と「レバレッジ強化(加杠杆)」という一見相矛盾する経済操作を通じて、短期的には急激な景気減速を避けつつ、中期的に経済をより質の高い発展段階に導こうとしている。景気刺激のためには不動産市場に頼らざるを得ないという認識も強く、一部地方政府による住宅購入抑制策の緩和が予想できるが、一方で中央政府が全国的な政策転換を躊躇する可能性もある。今回は、2019年の中国政府の不動産政策の行方について考察する。

2018年の不動産市場に見る「2つの特徴」

中国経済を見る上で、不動産市場の動向は次の2点から常に大きな注目を集めている。(1)ミクロ的に、中国の一般の人々の生活上の最も大きな関心が住宅問題であること、(2)マクロ的には、不動産市場規模がGDPの16.7%(18年実績)、不動産業部門が生み出す付加価値はGDP全体の6.7%(同)だが、鉄鋼、セメントなど関連部門も含めるとGDPの20~30%に及ぶと見られており(中国中銀証券他推計)、その動向が経済全体を大きく左右するためだ(参考: 不動産依存が深刻な中国 住宅の価格と在庫の実態は? )。

●特徴その1…加熱していた市況の沈静化と軟化

第1の特徴は16年から過熱していた市況が18年半ばに至り沈静化し、その後、月を追う毎に市況が軟化したことだ。中国不動産情報サイト「房天下」は18年新築住宅取引面積14.6億㎡、売買金額12兆元、中古住宅は3.95億㎡、売買件数420万棟で、新築と中古を合わせた取引量は17年比ほぼ横ばいで、かつての勢いはなくなったとしている。

中国国家統計局統計でも商品不動産取引面積17.2億㎡(前年比1.3%増)、金額15兆元(同12.2%増)で、17年の各々7.7%増、13.7%増から伸び率が鈍化しており、また不動産業部門の創出した付加価値は3.8%増で、産業部門別で農業の3.6%増に次いで低い伸びだった。国家統計局の主要70都市の新築住宅価格も年後半から前月比マイナスを記録する都市が増え始めた[図表1]。

中古住宅も含む中国指数研究院の百都市価格指数も参考に、景気循環的観点から過去10年間の不動産市場を見ると、09~15年、平均約3年の周期が2回観察され、現在の周期は15年3月から始まった市況回復→上昇→安定を経て下降の局面にある。すでに約4年経過し、市場では19年下期に市況が底を打つと予測されている。また、同価格指数の上昇率も18年に入ってから月を追う毎に鈍化している[図表2]。

中でもこれまで相対的に上昇率の高かった2、3線級都市と呼ばれる地方都市の上昇率鈍化が著しい。地域別特色としては、長江・珠江デルタ地区周辺の取引が活発な一方、住宅購入抑制策が最も厳しい北京周辺、新たな抑制策を導入した海口(海南省)やこれまで取引が過熱していた成都(四川省)の落ち込みが際立った(参考: 再び上昇の兆しが見られる中国大都市の住宅価格 )。

●特徴その2…不動産賃貸市場の活況

第2の特徴は、そうした中で不動産賃貸市場が活況を呈したことだ。過去、賃貸市場の未発達が住宅価格高騰の一因になってきたとの認識から、2015年以降、賃借人と住宅購入者の同等権利保障(租售同権)、賃借物件の供給増などの政策的後押しで「租售併挙」、つまり住宅の賃貸と購入を同時に発展させていくとの理念の下、賃貸市場、特に「長租公寓」と呼ばれる長期賃貸マンション市場の育成が進められてきた。長租公寓市場には万科、龍湖、保利、碧桂園といった大手不動産企業を中心にすでに20社以上が参入しており、今やその主要業務領域となっている。

中国の有力市場調査会社「智研咨詢」や賃貸市場情報を提供する「貝殻租房」などによると、18年総人口13.9億人のうち賃貸人口は約2億人、賃貸面積67.33億㎡(19年1月17日付21世紀経済報道によると、賃貸人口は都市部で1.6億人、都市部人口の21%という統計もある)、賃借者は大学を卒業したばかりのホワイトカラーを中心に個人が6割、企業が3割を占める。

特に新1線級都市と呼ばれる重慶、長沙、武漢、成都などの賃貸市場の成約が著しく伸び(各々前年比52%、48%、13%、6%増)、これら都市の賃料はほぼ毎月前年比20~40%の上昇を記録した[図表3]。

ただ、上海、広州など1線級都市の賃貸料は比較的低い上昇率に止まり、また新1線級でも年後半以降上昇率が鈍化している。また、競争激化で今後参入不動産企業の淘汰が進むとの見方もある(19年1月3日付経済参考報)。

中期的には、住宅購入抑制策、住宅価格の高止まり、持家志向の弱まりといった人々の考え方の変化などから、23年までに賃貸面積は84億㎡、賃貸人口2.48億人にまで拡大すると予測されている。なお、住宅価格の高止まりから購入をあきらめて賃借を続ける者が増加し、各地で賃借人の平均年齢がこれまでの20歳代から18年は30歳半ばにまで上昇した(特に北京、天津、杭州が高く、各々35.6歳、34歳、33.2歳)(参考: 地方都市で過熱化 中国「住宅市場」の状況 )。

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最終更新:6/17(月) 12:12
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