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ドラえもんは作れる 若き異才が崩す人とロボットの壁

4/18(木) 7:47配信

NIKKEI STYLE

「僕、ドラえもんを作りたいんですよ」。筆者が初めて大澤正彦さん(26)と出会ったのは3年ほど前のこと。最初はとっぴに聞こえた。しかし、ランチのステーキを食べながらじっくり話を聞くと、人間がロボットに愛着を感じるとはどういうことなのか、人間と人工知能が共存する世界とはどんなものなのかなど、人工知能、神経科学、認知科学を統合した先にある深淵なビジョンを語っていることが分かってきた。「最近、完成までのロードマップを具体的に引けるようになったんですよ」と語る大澤さんにチャレンジの軌跡を聞いた。
大澤さんは現在、慶応義塾大学大学院の博士課程後期に在籍中。2011年に東京工業大学付属(科学技術)高校を首席で卒業、15年には慶応義塾大学理工学部を首席で卒業した。若手の人工知能研究者を中心に分野横断的な人々が交流する全脳アーキテクチャ若手の会を設立。様々な分野の異才が集う孫正義育英財団の1期生でもある。異才だが、「ドラえもんは1人で作るものではなく、みんなで作るもの」という言葉通り、孤高の天才というよりいつも誰かと笑っている印象だ。
博士課程後期の研究は、人工知能、神経科学、認知科学にまたがるため、何の分野を専門としているのか端的に言い表しにくい。「ドラえもん研究者」が最もしっくりくる。

■「ドラえもん」と口に出せず、秘めた思い募らせる

大澤さんの少年時代。「ドラえもんを作りたい」と口にすると、多くの大人たちは「頑張ってね」と応援するそぶりを見せながら、かすかに鼻で笑った。大人の感情を敏感に察知する大澤少年は何度も傷つき、いつしかドラえもんの名を口にしなくなっていた。
しかし、思いは胸に秘めていた。小学4年生からロボット作りを始め、電子工作を独学するまでになった。高校は東工大付属高校に進学した。
実は、正確にいつドラえもんを作りたいと思い立ったのか、記憶がないという。「なんで作りたいのか本当の理由は自分でも分からない。逆に言えばドラえもん作りは自分にとって(疑いようのない)自明なことなんです」
高校は男子生徒が多く、「華やかさのかけらもなかった」と笑う。専攻はコンピューターだったが、ドラえもんへの思いは変わらず、ロボット作りをやめなかった。
推薦枠で東工大に進学し、研究室にこもってドラえもんを生み出す日を夢見ていた。「ドラえもんと口にできないつらさを散々味わったのだから、絶対に成功させて世間を見返してやる」と思い詰めていたという。
ところが、東工大への推薦枠から漏れてしまった。指定校推薦で慶応大の理工学部に進むことに。この出来事が大澤さんの行く末を大きく変えていく。


当時のことを大澤さんは楽しげに語る。「だって、慶応の子たちとカラオケに行くと、僕らと全然違うんですよ。RADWIMPSって何だ?という感じ。僕らアニソンしか歌ってませんでしたけどって」。「全くイメージが真逆の大学の子たちに、僕らがどのように映っているのか考え込んでしまいました」
大澤青年の中で何かがはじけた。
当初思い描いていたのは、研究室にこもり、身なりにも気を使わずにひたすら研究をする生活。しかし、「そうやって作ったものを『はい、ドラえもんだよ』と差し出されても、あの慶応の子たちは不気味だと思うんじゃないでしょうかね」。自分が世間の価値観からずれていることを自覚した大澤さんは、高校までの自分のよりどころだった技術やテクノロジーを、4年生になるまでの3年間封印するという荒療治に出た。
「普通の人の感覚を今学ばなかったら、みんなに認めてもらえるドラえもんが作れないという思い。ドラえもんには、作る人のパーソナリティーや背景、ストーリーが大きく反映されるはずですから」

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最終更新:4/18(木) 12:15
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