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大人気漫画のアイヌ語監修者が語る「『ゴールデンカムイ』は"アイヌはカッコいい"というイメージをつくってくれました」

4/18(木) 6:20配信

週プレNEWS

日露戦争後間もない北海道を舞台に、精鋭軍人、新撰組の生き残り、奇人変人の数々、そしてアイヌと、バラエティに富んだ登場人物が金塊をめぐって冒険とバトルと美食を繰り広げる冒険活劇漫画『ゴールデンカムイ』(野田サトル著、集英社)。

この漫画を「アイヌ語監修」という立場から支える言語学者の中川裕(なかがわ・ひろし)氏の新著『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』(集英社新書)が先月刊行された。

中川氏は東京大学在学中の1976年から北海道に足しげく通い、減る一方のアイヌ語話者を訪ねては話を聞き、研究を続けてきた。今でも毎月のように北海道に行くが、今度は逆にアイヌ語を教える側になっていると言う。

40年以上、アイヌ語を見守ってきた中川氏に、『ゴールデンカムイ』のアイヌ語監修の舞台裏と、言葉への想いを訊いた。

* * *

──まずどういった経緯でアイヌ語に興味を持たれたのでしょうか。

中川 大学の授業でアイヌ語の勉強を始めたのですが、初めから興味があったわけではありません。ある程度理解できるようになってから、面白くなってきたんです。

──その過程で、言語以外のアイヌ文化にも興味が広がっていったのですね。

中川 僕の究極の目標はアイヌ語の辞書をつくることだったので、その言語と文化に関するありとあらゆることを知っていないと記述できないわけです。

学生の頃はそこまで頭が回らなかったのですが、やっていくうちに、日本文化の考え方や知識で測っていてはアイヌ語を記述できないというふうに思えてくる。アイヌの伝統的な世界観の中へ自分も入っていかないと、言葉の意味もわからない、と。

例えば漫画のタイトルにもなっている「カムイ」という言葉にしても、それにぴったり当てはまる単語は、日本語にはありません。一般的には「神」と訳されますが、アイヌの世界観では、人間のために活動しているものは、道具も含めて「カムイ」です。すると日本語の「神」とはちょっと違ってきますよね。

そこで今回の本では「環境」と訳しましたが、それが正しいわけでもない。正確には、「カムイ」は「カムイ」であるとしか言えないんです。

言葉を突き詰めてゆくと世界観もわかるし、逆に言うと世界観がわからないと言葉もわからない。言葉を理解することと文化を理解することは表裏一体なのです。

──中川先生は学生時代からアイヌの方々に直接アイヌ語を学んだそうですね。その人たちの中には『ゴールデンカムイ』の舞台である20世紀初頭に幼少期を過ごした方もいるかと思います。

中川 僕がフィールドワークで話を聞いた人たちは、だいたい1900年前後の生まれなんですが、多くの人が「アイヌ語はこれから必要ないから覚えなくていい、日本語を覚えろ」と親に言われて育ったそうです。そうじゃない人はむしろ少数派です。

じゃあその人たちはなぜアイヌ語を覚えているかというと、親がアイヌ語しかしゃべれないから、どうしても覚えちゃうんですね。アシリパ(『ゴールデンカムイ』のヒロイン)は1890年代の生まれと推測され、この人たちより少し年上だから、アイヌ語を母語としていた世代です。

そして、この世代は日常的に日本語も使え、「覚えなくていい」と言われて育ったから自分の子供にはアイヌ語を教えていません。こうしてアイヌ語の話者は減っていったのです。

──そうしたこともあり、先生がフィールドワークを始めた頃はアイヌ文化を聞き出すのが困難になっていたそうですが、当時と現在とを比べて、アイヌを取り巻く状況はどう変わりましたか?

中川 僕がアイヌ語の勉強を始めた頃、アイヌの方たちの中には差別されている実感を持つ人々が大勢いました。われわれとしても、北海道で「アイヌ」という言葉を使うことさえ憚(はばか)られた時代です。「俺たちは研究材料か」というふうにもろに言われることもありましたしね。

それに比べると今は、そうした状況をあまり体験していない若い世代も増えており、研究や調査に対する抵抗感も以前よりは少なくなっています。アイヌが自身のことをアイヌと言えるようになっている。それが、大きな違いですね。

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最終更新:4/18(木) 6:20
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