ここから本文です

値上げし「客離れで赤字」相次ぐニッポン

4/18(木) 11:00配信

日経ビジネス

 焼き鳥を得意とする居酒屋チェーン大手が、3月8日に2019年7月期(単体)の通期の業績予想を下方修正し、赤字に転落する見通しになったと発表した。14年に上場してから、赤字は初めてという。17年10月に値上げを実施したものの、これが客離れにつながった。積極展開した新店舗で売上高が計画を下回っており、関連する損失も追加計上。中期経営計画は取り下げられた。

【図】日銀短観 「国内での製商品・サービス需給判断DI」 個人消費に直接関連する3業種(全規模合計) 注:直近は19年3月調査における先行き(6月予測)(出所)日銀

 この事例をニュース画面で目にして、日本の外食産業が置かれている環境の厳しさをあらためて痛感させられたのは、筆者だけではあるまい。今でも筆者がよく覚えており、講演や勉強会などの場でも引き合いに出すことがあるのが、18年10月5日に8年ぶりの中間決算赤字を発表した大手牛どんチェーンの事例である。

 肉やコメといった原材料になる食材の価格が高騰したほか、人手不足でアルバイトやパートの時給が高くなり、必要人員の確保がままならないため残業代もかさむ状況に陥った。だが、業界内にはほかにも大手チェーンがあるため、安易に看板商品の値上げに動くと「この牛どんチェーンは値段が高い」というイメージが広がって、集客力が落ちかねない。

●中食との競争も激化

 さらに、コンビニの弁当やおにぎりなど「中食」との競争も激化している。このため、上記の会社の社長は記者会見で牛どんの販売価格について、「変える(=値上げする)計画はない」と表明せざるを得なかった。この会社ではセルフサービス型の店舗への転換を進めていき、将来は店舗全体の4割をセルフサービス型にする方針という。

 このところ飲食料品や外食で、原材料費・物流費・人件費といったコストの増加を理由とする値上げを発表する企業が目立つ。だが、それらはどこまで浸透し維持できるのだろうか。筆者は大いに疑問視している。

 日本経済新聞は2月28日朝刊に、「統計不正が落とす影――食品値上げ苦戦、デフレ意識」と題したコラム記事を掲載した。そこには、「コスト増で春からの値上げが相次ぐが、先行して値上げした企業では逆に業績が悪化した例も目立つ」「2018年に採算改善期待から買われた値上げ銘柄が、一転して売られるようになったのは、先行企業のつまずきがある」と書かれていた。

●食パンメーカー不振の背景

 18年7月に食パンや菓子パンを値上げした大手食品メーカーが2月14日に発表した18年12月期の純利益は、前の期と比べて46%減と大きく落ち込み、この会社の株価は翌日に急落したという。

 日本で売られている食パンは、最近はやっている1000円程度する高級品から、6枚切り100円未満という安値の大手スーパー店頭にあるPB(プライベートブランド)品までさまざまだが、消費者のうち多数派は、賃金があまり増えない一方でふだん買っている財・サービスの価格は上がってきているという一種の危機感を抱き、生活防衛的な購買姿勢を維持して(ないし強めて)いると考えられる。

 そうした姿勢を「前線」で敏感に感じ取っているスーパーなどの販売価格はなかなか上がらないだろう。メーカーの希望価格よりも低い水準に店頭の実売価格があることに、違和感はない。

1/3ページ

最終更新:4/18(木) 11:00
日経ビジネス

記事提供社からのご案内(外部サイト)

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事