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働きすぎで倒れたOL 一年間の休養でみつけた「ときめき」とは[南沢奈央の読書日記]

4/19(金) 17:04配信

Book Bang

豆のすじを取るということ

 実は、前回紹介した綿矢りささんの『手のひらの京』の文庫本を本屋さんで手に取ったのは、カバーが目に留まったからだった。今日マチ子さんによる装画だったのだ。
 わたしは今日マチ子さんの作品が好きだ。何年か前に、雑誌の連載で、百人一首を今日さんの解釈で1ページの漫画にするというものがあった。たまたま連載初回を読み、透明感のあるイラストと切り取り方の巧みさ、百人一首の解釈の爽やかさに惹かれ、それからわたしは毎月雑誌を買っては今日さんの連載ページを切り抜いて、ファイリングをしていた。
 今日さんが描く少女が本当に素敵なのだ。周りに漂う空気感が良い。色使いもあるかもしれないけれど、やさしくて、でもどこか意思をしっかり持っているのを感じ取れる。『100番めの羊』は修道院で暮らす高校2年生のなおみという女の子が主人公で、“なおみ”と“なお”で名前も近いし、ショートカットな感じが似ているから、妙に親近感を覚えたりした。帯に“目指せ!TVドラマ化!(本気です)”と書かれていて、なおみ役を出来ないかなぁなんて未だに夢想している(本気です)。また、少女と戦争をテーマにした『いちご戦争』は、かわいさと怖さが共存していて、すごい世界観。絵を眺めているだけでも良し、さまざまな読み取り方もできる作品集なので、いままで、何度か友達などに贈っている。

 今日さんの作品の中では珍しく、少女ではなく、女性が主人公の漫画と出会った。それが『ときめきさがし』だ。
 主人公は、24時間働くことが大好きだというOL。働きすぎて倒れてしまい、1年間仕事を休まなければならなくなった彼女が、ヒマさに戸惑い、“働きたい”とうずうずしながらも、どう生きるかを探っていく物語だ。
 これは今日さんの経験が元になっている。実際、仕事に夢中になりすぎて、倒れてしまったことがあるという。長い連載期間を経て一冊の本となった本書を、今日さんは「私自身の考え方も変化して、その記録にもなった大切な一冊」と紹介していた。
 主人公ははじめ、時間があるうちにできることをやらねば!と張り切り、1週間分のおかずを作り置きしたりなんかする。でもすぐにヒマが耐えられなくなり、友達に連絡を取ってみたり。少し慣れてきて、職場では履けないような派手な靴下で出掛けたり、平日にのんびりヘアサロンに行ったり、ガーデニングを始めたり、楽しみ始める。だけど、職場の後輩が働く姿を見て、「わたしだって仕事がしたい」と悔しい気持ちになる。さらに子供が出来たことによって、“仕事”について考え直し、気持ちが変化していく――。

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最終更新:4/19(金) 17:08
Book Bang

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