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大学サッカーという選択――Jクラブとの比較から考える育成論

4/19(金) 19:55配信

footballista

筑波大学蹴球部の特徴

――「出場機会」についてもお伺いしたいです。今回はJリーグとの比較で大学サッカーを考えたいのですが、最近はU-23を設けるJリーグクラブも存在します。そこに加入すれば高卒でも比較的出場機会を担保される環境にあると感じているのですが、J3で試合経験を積むことと、大学サッカーで試合経験を積むことで成長に違いは生まれると思いますか?

 「今年入学してきた岩本(翔/ガンバユース出身)とも話したんですが、シンプルにJ3も筑波大学もほとんど差がないと。入学前に練習にも参加してもらって、ここならもっとうまくなれると思ったと話してましたね」


――岩本選手もそうですが、今年は柏レイソルU-18から森海渡選手や横浜F・マリノスユースから栗原秀輔選手など実績のある選手が筑波大学を選択しています。みな、レベルの高さに惹かれて入学を決めているのですか?

 「いや、サッカー以外のモチベーションも大切にしてもらっています。入試前に面談もするのですが、大学でスポーツの勉強をしたかったり、教員免許を取りたかったり、サッカー選手だけじゃない人生経験を積みたい学生が増えてきているように感じます。筑波はもともと教員育成の大学ですからね。そういう学びの意図を持っている者の方が筑波向きって感じはします」


――「大学サッカー」と一括りにして考えてしまっていましたが、大学間で大きな違いがありそうですね。

 「筑波大学(の蹴球部)は推薦入学の数が各学年5名なんです。他の大学は各学年10~15名程度で競争を促すのですが、筑波はその5名以外は一般入試組。それでも学年では40名以上になります。サッカーを一生懸命するのは大前提ですが、いろんなモチベーションを持った学生がいて、プレーヤーとして極めるだけじゃない集団でないことは大きいですね。試合の映像分析をする学生もいれば、スポンサー営業をする学生もいる。それぞれのやり方で部へ貢献したり、自分のスキルを高めようとしていることが最大の特徴ですね。あと、推薦組は体育専門学群に所属するんです。そこではスポーツサイエンスや栄養学など選手として必要な知識を学べる。それは高卒の選手とは決定的に違いますね。いつ、何を食べ、どう休むことが必要なのか、理解できていない高卒のJリーガーはまだ多いように感じます。また、たまたま隣にいる同級生が柔道の日本チャンピオンだったり、他競技にも一流の選手がいますから、そういった交流も大きな刺激になると思います」


――そうした筑波大学の環境で育てたい選手のイメージはお持ちでしょうか? Jリーグユースはトップチームのサッカーに合わせた選手を育成することを志しているという話も聞きますが。

 「あるサッカーしかできない選手を育てるのは育成の観点から考えると大きな弊害だと思います。ベーシック部分は高い基準を求めますが、それ以外は小井土の色を押し付けるようなことはしないようにしています。だから、どんなチームでも監督の求めることを理解し、すぐにフィットし、かつ自分の特徴を出せる選手を輩出することが理想ですね」


――Jリーグのコーチ経験をふまえて、どんな監督でもフィットするために必要な要素は何だと思いますか?

 「一番はコミュニケーション能力。つまり、わからなければ聞く。チームメイトの意見を聞く。監督の考えを理解できる力が必要。それをしないで、自分の特徴だけを貫き通そうとする選手は難しいかな。やっぱり双方向にやりとりができる力が大切ですね」


――そういう意味では、今年の筑波大学蹴球部にも対象選手がいますが、「Jリーグ特別指定選手制度」を利用して小井土監督以外の監督の考えに触れられるのは良い経験ですね。

 「そうですね。Jリーグに限らず、世代別代表も含めて外の刺激を受けて帰ってくる選手の存在はチームにとっても大きいです。筑波よりも緊張感あったよとか、あの監督はこういう考え方をしていたよとか、様々なサッカーのスタイル、より高い基準を知って、それをチームにフィードバックしてくれるのはありがたいです」


――では、最後に小井土さんが考える、日本サッカー界における大学サッカーの役割をお聞かせください。

 「プレーヤーを輩出するという意味では、最後の育成の場として機能していると思います。実際、Jリーグも大卒選手の数が増えている事実もありますし。あとは、Jリーグクラブでのコーチ経験を振り返ると、大卒選手の方がチームでリーダー的に存在になれるケースが多いように感じます。人間的に成長することによって、サッカー文化を創っていく側を担えるようになる。例えば、羽生(直剛)がFC東京のスカウト、兵働(昭弘)がエスパルスのスカウト、岡田(隆)もジュビロ磐田の強化部にいたり……彼らのような筑波OBと話していると、大学を卒業して、人としてさらに成長した者がクラブに残って、今度はクラブを支えていくんだろうなとは感じます。大学で4年間悩み、苦しみながら過ごした者にしか出てこないアイディアとかエネルギーがあると思います。だから、“プレーヤー”以上に、広い意味でサッカー界に貢献できる“人材輩出”という役割が大きいのではないでしょうか」

<プロフィール>
Masaaki KOIDO
小井土正亮

筑波大学蹴球部監督。1978年岐阜県出身。柏レイソル、清水エスパルス、ガンバ大阪トップチームでのコーチを経て、2014年より現職。現場での指導に従事する一方、大学ではサッカーコーチング論の授業を担当。後進の指導に当たっている。

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最終更新:4/23(火) 11:18
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