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ホームレスの猫たちに惚れ込んで... カザフスタンの旧市街にて

4/19(金) 13:20配信

ニューズウィーク日本版

<写真は独学で覚えた。被写体のほとんどは、猫と犬。詩的な感覚こそがエヴジェニヤ・ゴーアの最大の持ち味だ>

自分自身に対して自然体であることは、写真家にとって最も大切なことかもしれない。それは、誰かのために撮影する、あるいは、こう撮れば世間が気に入ってくれる、認めてくれると思って撮影する写真の対極に位置する。

むろん、後者も写真にとって重要な要素だ。人は社会との絡み合いで生きている。だがその被写体に、あるいはその写真を撮る世界に惚れ込んでいなければ、いくら才能のある写真家でも結局は飽きられてしまう。また、自分の成長が一定のところで止まってしまう。残念ながらそれは、インターネットとSNS の時代、写真界の悲しき傾向だ。

今回取り上げるのは、そんな中、自らの日常に絡みつくものを自然体で、気負いもなく一人の観察者として撮影し続けているカザフスタンの32歳女性、エヴジェニヤ・ゴーアだ。写真は独学で覚え、2006年から「Among the Worlds」というプロジェクトを継続している。

そのメインテーマは、彼女が常に興味を抱き続けているという、人間と動物の関係だ。被写体のほとんどは、猫と犬。とりわけ、ゴーアの日常的な環境に常に存在しているという猫である。ただし、大半は飼い猫ではない。彼女が「ホームレス」と呼ぶ、ストリートで生活している猫たちである。

ゴーアが写し出すホームレスの猫たちには、動物愛護活動家がしばしば意見広告などで社会に訴えかけるような、大きな悲壮感はない。かといって可愛いらしさを前面に押し出した写真でもない。すでに述べたように、ゴーアが、彼女の生活空間で接する猫などの動物を自然体で撮っているだけだ。

<密かに掲げている裏のアジェンダ>

そこには、彼女自身が本能的に持っているであろう構図へのセンス――パーフェクトになる手前でわざとドレスダウンした着こなしのような魅力が光っている。それがカザフスタンの首都アスタナの旧市街の街並みや、街の雰囲気と重なり合って不可思議で落ち着いたメランコリーな感じを漂わせている。

実のところ、こうした詩的な感覚こそがゴーアの最大の持ち味だ。結果として、見る者を彼女の世界に感情移入させてしまうのである。そしてそれは、彼女自身が密かに掲げている裏のアジェンダにまで目を向けさせるかもしれない。ホームレスの動物に自らを投影し、彼らの身の上を考えたりするのだ。それにより動物たちの境遇が変わっていくことを願っているという。

ちなみに、ゴーアの作品の中に流れる「メランコリー性」は、彼女によれば意図的なものではない。ある種、本能的な感覚であり、結果としてそうなっただけだという。

今後は動物だけでなく、人間の撮影も増やしていくつもりらしい。自分の写真世界をフレームの中には入れたくない、固定したくない、とゴーアは語る。自分が愛し、自分をエキサイトさせてくれるもの、興味を与えてくれるものも含めて、それらと写真を通して話したい――つまり、表現したいのだという。

それが、ゴーアが自身を取り巻くさまざまな世界と付き合っていく方法だ。

今回紹介したInstagramフォトグラファー:
Evgeniya Gor @gykavka

[執筆者]
Q.サカマキ
写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争――WAR DNA』(小学館)、“Tompkins Square Park“(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

Q.サカマキ

最終更新:4/19(金) 13:20
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