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マイナス金利政策の銀行収益への影響で日欧比較

4/19(金) 9:06配信

NRI研究員の時事解説

ECBはマイナス金利政策の影響を再点検

日本銀行が4月17日に公表した「金融システムレポート(2019年4月)」では、不動産向け融資を中心に銀行の融資活動に相応の過熱感が生じていることや、中長期的な金融機関の収益性の問題に焦点が当てられた。他方、こうしたプルーデンス(金融機関の健全性・安定性)の観点ではなく、マクロ金融政策の観点から注目されるのが、マイナス金利政策が銀行の収益に与える影響について、日本と欧州で比較した分析がレポートで示されたことだ。

欧州中央銀行(ECB)は、将来の追加金融緩和策実施も視野に入れ、マイナス金利政策が市中銀行の収益性に与える悪影響を再点検し、また、それを緩和する措置を検討している。日本やスイスが既に導入している、階層型中銀当座預金制度の導入の是非も検討している模様だ。こうした観点から、マイナス金利政策が銀行の収益に与える影響が、改めて欧州で注目を集めている。

あたかもこれに呼応するかのように、今回の日本銀行の金融システムレポートでは、マイナス金利政策が銀行の収益に与える影響について、日本と欧州を比較した分析が示された。そこでは、欧州諸国と比較して、マイナス金利政策の収益への影響を格段に大きく受ける、日本の銀行の姿が浮き彫りにされた。ただし、それ自体は、2016年1月に日本銀行がマイナス金利政策を導入する際に、既に十分に予想できたことである。

欧州に大きく劣る日本の銀行の収益性

欧州諸国と比較した際の日本の銀行の特徴についてレポートで指摘されたのが、業務粗利益ベースで見た利益率が欧州諸国は横ばいで推移する一方、日本では低下傾向となっていることである。日本の銀行の業務粗利益ROA(総資産利益率)は近年低下傾向を辿り、2017年度で1%強の水準であるのに対して、ユーロ圏の銀行では3%弱の水準で横ばいの推移をしている。

資金運用利回りが低下する中で、欧州諸国では資金調達利回りも相応に低下していることで、マイナス金利政策による利鞘の悪化効果が緩和されたのに対して、日本では資金調達利回りの低下がほとんど見られないことが、こうした乖離を生んでいる。日本では、低金利、ゼロ金利の継続期間が歴史的に長かったことで、預金金利の低下余地がほとんどなかったこと、銀行の負債に占める預金の比率が極めて高く、市場性資金の調達コスト低下の恩恵を受けにくかったことがその背景にある。これは、マイナス金利政策導入以前からある、日本と欧州の銀行の資産・負債構造の違いに根ざすものだ。

また、利益率の低下を映して、自己資本比率が低下傾向を辿っていることも、日本の銀行の大きな特徴だ。ユーロ圏では、自己資本比率は上昇傾向にある。さらに、このように、利益率と自己資本比率が低下傾向にある中、外債や投資信託などリスク資産への投資を積極化させていることが、欧州と比べて日本の銀行の特徴にもなっている。その結果、日本の銀行の収益、経営体力が内外の金融市場の影響を受けやすくなっている点も、日本銀行は指摘している。

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最終更新:4/19(金) 10:16
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