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ゲノム編集食品って、本当に今夏流通するの?

4/20(土) 5:00配信

商業界オンライン

  3月27日、厚生労働省の新開発食品調査部会が「ゲノム編集技術を利用して得られた食品(以下ゲノム編集食品)等の食品衛生上の取扱いについて」という報告書を公開しました。

 遺伝子組換え食品とゲノム編集食品の違いは、簡単に言うと「他の生物の遺伝子を組換えた(組み込んだ)食品が遺伝子組換え食品」で、「遺伝子を切断しただけのものがゲノム編集食品」(注1)です。

 どちらも、遺伝子を操作していることに変わりはありませんが、調査部会は「ゲノム編集食品は遺伝子組換え食品とは別物」とし、安全性も問題がないので、届出(任意)をすれば販売しても構わないという結論に達しました。

 このため、マスコミ等では「この夏にもゲノム編集食品が販売される」と紹介しましたが、すぐ店頭に陳列されることはほとんどないでしょう。その理由は3つあります。

(注1)ゲノム編集食品にも、遺伝子を切断して他の遺伝子を組み込んだものもあります。

(1)消費者庁の判断が示されていない ゲノム編集食品であることを表示するのか、しないのかが決まっていません。食品表示は消費者庁の所管ですが、まだ表示義務を課すのかどうか未定です。厚生労働省は「ゲノム編集食品は、遺伝子組換え食品とは違う」と結論付けましたが、消費者が「食品選択をする場合の表示」については消費者庁が判断します。

 通常、こうした表示義務を課すかどうかの判断は、食品表示部会等で1年間程度検討されます。そうなると、早くても来年に判断されるはずです。ただし「消費者が食品を選ぶ際に表示する必要がない」と簡単に決まる可能性もあるので、今年の夏に販売が開始されるというのです。

 しかし、消費者団体等では「表示が必要だ」という意見も多く、そうした声を無視して3カ月程度で「表示する必要はない」と結論付けると、消費者庁への不信感が強まります。消費者庁が、性急に結論付けるのか見守るしかありません。

(2)商業生産されていない ゲノム編集食品は、海外で研究開発が進んでいる「筋肉が増強された牛」、日本でも、農林水産省の「収量が多いイネ」や、複数の大学では「筋肉が増強されたマダイ」などの開発が進んでいます。

 しかし、どのゲノム編集食品も、今は研究開発段階で、商業生産されていません。スーパーマーケットなどの店頭に並ぶためには、本格的な生産が始まらないと実現できません。どんな食品(食材)であっても、商業生産するためには、それなりの準備期間が必要になり、早くても1年間程度の時間を要します。

(3)販売価格が分からない 店頭に並ぶには、販売価格が適正なのかが重要なカギになります。どのゲノム編集食品も、どのような性質のもので、いくらで販売できるのかが決まっていません。商業生産されていないので当然ですが、ここが一番重要なポイントです。

 商業生産するためのコストが決まっていない段階では、販売価格を決めようがありません。研究開発費はもちろん、生産場所の確保や人件費等がどのくらいなのか、そして今の商品との価格差はどの程度なのかが分からなければ、小売店も販売できるのかどうか判断できません。

 ゲノム編集食品は早くても、2020年以降に販売される可能性が高い商品ですが、詳細が分からない限り、小売店や飲食店で取り扱えるかどうか分かりません。「奪い合い」になるのか、「様子見」になるのかは1年以上先の話でしょう。

 いずれにしても、新たな「食の2020年問題」に間違いありません。とりあえずは、強い関心を持って情報収集にあたってください。

垣田 達哉

最終更新:4/20(土) 5:00
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