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メキシコに「国際結婚移住」した日本人妻の苦悩

4/20(土) 5:50配信

東洋経済オンライン

 孤独は、嫌でも自分の内面と向き合う機会となる。改めて、やりたいことを考えたときに思い出したのが、昔から好きだったデザインだ。数年ぶりにスケッチブックを開き、時間を見つけては、絵を描くようになった。

 「描きながら、少しずつ、元の自分を取り戻してる感じがします」。集中してペンを走らせている間は、妻ではない「河村博美」としての自分になれる。メキシコに来て2年、この土地になじもう、よき妻になろうと努力してきた。しかし、それは誰が求めた姿だっただろう。ルイスさんからも、その家族からも、よき妻であることを求められたことは、一度もない。

 「実は去年、日本で年越ししようかって話があったんです。でも、私が勝手に、メキシコのクリスマスは家族で過ごすものだから、妻として日本に戻るのはどうかと考え、帰りませんでした」。そのときも、誰に何を言われたわけでもなかった。「後から、なんで帰らなかったんだろうってすごく後悔しました」。

 自分の気持ちより、よき妻としての行動を優先させてしまう博美さんに、ルイスさんは「何でも自分で決めていいんだよ」と声をかけてくれた。言われるまで、そういう感覚を忘れていた。そして2年ぶりに、博美さんは日本に帰ることを決めた。ルイスさんは仕事のため同行せず、博美さん1人で帰国し、2カ月ほど滞在する予定だ。

 「一度、妻という立場から自由になって、自分がどうしたいか考えたいなって。日本に帰って、元の自分って何だったっけと思い出したい」。メキシコに来てから、環境の変化に合わせることを最優先に、流されるまま進んできた。いったん立ち止まり、これからのことを考えたい。自分だけでなく、ルイスさんにも、彼自身の気持ちと向き合ってほしかった。このままメキシコで暮らすのか、夫婦で日本の生活にチャレンジするのか。

■少し離れることで、全体を客観視できる

 「国際結婚って、楽しいけど、それまで予想もしなかった悩みが出てくるなって。日本に住んでみたいとか、会話に出ることはありますけど、なかなか決断できない。でも、メキシコに老後もずっと住めるかな? という不安もある。いったん、夫婦それぞれでしっかり考えて、また話し合いたいと思っています」

 メキシコに2年暮らした博美さんは、今、外の視点を持つことの大切さを痛感している。ずっと同じ場所にいると、悩んでいてもそれがメキシコの問題なのか、地方特有のものなのか、はたまた自分の問題なのか、見極めが難しい。少し離れることで、自分も含めた全体を客観視できる。

 「どこに住むにしても、1つの場所に縛られるのは危険だなって感じています。こっちで、日本人同士のコミュニティーは大事だと思いつつ、そこにどっぷり漬かるのは避けたい。価値観が1カ所で固定されてしまうと、崩れやすくもなるから」

 32歳で結婚して、いったんは人生が落ち着いたように感じた。しかし、それはゴールではなく、新たな旅の始まりにすぎなかった。「振り返ると、もう30半ばかって感じなんですが、これから死ぬまでって考えたら、まだまだ先は長いぞって。悩みは尽きないけど、メキシコに来て、だいぶ強くなりました」。

 1人で頑張ることだけが「強さ」ではないと気づいた博美さんの顔は、晴れ晴れとしていた。

ヒトミ☆クバーナ :ライター

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最終更新:4/20(土) 7:45
東洋経済オンライン

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