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【新研究】eスポーツで脳の老化を予防できる可能性 ― 賞金総額700億円を稼ぐスター選手のキャリアを通して

4/21(日) 9:10配信

エスクァイア

脳の反応年齢の衰えは、急激です

 カナダ・ブリティッシュコロンビア州のサイモンフレイザー大学で行われた研究によれば、人々の脳の反射速度は24歳という年齢を境に低下しはじめます。

 16歳から44歳の間の3,305人のゲーマーを対象にした調査のため、科学者達が用いたのが『スタークラフト2(StarCraft II=日本語版未発表ですが、世界的に人気ある定番ゲーム)』というリアルタイムで非常に多くの判断を求められるゲームになります。

 このゲームで視覚(Looking)から行動(Doing)までの反応時間を計測することによって、プレイヤーがゲーム画面上で起こる出来事に対し、いかに迅速に対応しているのかを調べるわけです。そこで同等の技術レベルを持つ39歳と24歳のプレイヤーとを比較すると、そこには約150ミリ秒の差が生じていることが判明したそうです。15分間につき、おおよそ30秒の差が生じているということになるわけです。

 反応速度の低下の科学的理由のひとつとして、N-アセチルアスパラギン酸(NAA)という、私たちの脳神経系に高い濃度で存在している遊離アミノ酸の減少が研究によって挙げられています。

 髄鞘(ミエリン鞘=脊椎動物の多くのニューロンの軸索の周りに存在する絶縁性のリン脂質の層。神経パルスの電導を高速にする機能がある)へのアセテート(酢酸)の取り込みを補助することが、NAAの持つ役割のひとつ。脳内で伝達される情報の速度と最適化を増進させるため、細胞を絶縁する機能を有しています。このNAAの減少に加え、記憶保持を司る前頭葉と海馬の萎縮によって、情報処理能力の低下が起こると推測されています。

 ゲームをプレイすることで、さまざまな能力の活性化がなされている可能性は否定できません。種類の異なるゲームにより、脳の異なる機能が刺激されているのです。つまり、あなたのXboxだって、正しく用れば脳の「ワークアウト」にひと役買ってくれるのです。

 しかし、無休状態のトレーニングに肉体がついていかないのと同様の理由で、脳を使うゲームにも、その適量があると言えるでしょう。

 ずっとプレイし続けることが良いとは言えません。「スマブラ」や「ストリートファイター」のような格闘ゲームは思考の高速化のトレーニングになり得ますし、「フォートナイト」や「グランド・セフト・オート」のようなオープン・ワールド型のゲームは、加齢による海馬の萎縮を遅らせることができるかもしれません。eスポーツを巡る科学的理解については、まだまだ未知の領域であり、科学者やプレイヤーはその正しい用法をさらに追求して(同時に議論を戦わせて)いるのです。

 マルケスさんはそのような研究調査には、さして関心を示していないようです。競技選手達の多くにとっては、練習は重ねれば重ねるだけ良いというのが共通認識となっています。トーナメントの出場選手名簿にあるマルケスさんの紹介文には、次のように書かれています…「オンラインでもオフラインでもとにかく一日中、スマブラに明け暮れている」と…。彼がその生活を変える気配はありません。

 「もしかしたら、私の反射速度はやや遅くなっているのかもしれません」とマルケスさん。「でも、いざゲームが開始されれば、誰にもできないような技を見せてやるという自信はあります」ということ。

 確かにマルケスさんの持つ経験値の高さには、生物的な衰えを補って余りあるものがあるのかもしれません。彼はまだ自分の脳のポテンシャルを使い切っていない可能性があると指摘する、マーク・キャンベル博士のような研究者もいます。

 3年前、キャンベル博士はアイルランドのライムリック大学でレロ・eスポーツ・サイエンスリサーチ・ラボという研究室を立ち上げた人物です。

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最終更新:4/21(日) 9:10
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