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21世紀のジャズを流行らせた「メディア発のムーブメント」はいかに誕生したか|柳樂光隆(『JAZZ THE NEW CHAPTER』)

4/21(日) 11:01配信

FINDERS

レコードショップがJTNCを強力サポートしたワケ

ーー 『JTNC』が世間に受け入れられたと感じたきっかけはありますか?

柳樂:そうですね……。僕、レコード屋の店員にとって「ジャズの新譜」って売りづらいだろうってずっと思ってきたんですよね。

ーー 「売りづらい」、ですか。

柳樂:店頭で新譜を推したとしても、古参ジャズファンの方々からは「なんでこれを推してるんだ。それよりソニー・ロリンズを聴け」だとか、「ビル・エヴァンスの方がいいだろう」みたいに言われそうじゃないですか。

ーー お叱りを受けるわけですね。

柳樂:だから、その後ろ盾になりたいと思っていたんです。それで「1」を出したんですが、その後すぐ、ショップの反応がすごく良かったんです。CDショップがこの本を見てコーナーをつくりたいと言ってくれた。CDショップの人が『JTNC』とCDとを一緒に並べてくれてムーブメントにしてくれたという感じがあります。

ーー 今、音楽の聴き方はサブスクリプションサービス中心に移行していますが、ショップがあって本が置かれることって、まだ需要があるんですね。

柳樂:ありますよ。面白いことに、Spotifyでもなんでも、新曲が次々出る中でプレイリストをつくると、どれもみんな似たような内容になるという現象があるんです。そしてそれは、一般のリスナーでも、プロのライターやDJが選んでもそうなる。

それは、“制約”が少ないことも関係しているかもしれません。すべてある中で今面白いことが何かを選び取ると、売れてる人や、最近フックアップされて有名になった人がさらに流行る構図になってしまう。

アルゴリズム的につくろうとすると「似たようなものを統合してつくった一番いいやつ」みたいなものができてしまう。でも、レコード屋だったら、いずれかの楽曲を推したければ、売り場の面積でも試聴機に入れる順番でも、いろいろ違いをつくれるじゃないですか。

ーー 優先順位をつけられるわけですね。

柳樂:そこには、いまだに“ここだけの情報”がある。話題の新譜の横に置いてもらうことで、全然違う接続が生まれることもあります。それはウェブだとなかなかできないですよね。

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最終更新:4/21(日) 11:01
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