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女性器切除、ヴァギナアート、性的虐待──戦う5人の女性描いた「#Female Pleasure」が海外でヒット中

4/22(月) 20:17配信

ニューズウィーク日本版

ドキュメンタリーとして異例のヒット

2018年11月からドイツ、オーストリア、スイスで上映中のドキュメンタリー映画「#Female Pleasure(フィーメイル・プレジャー) 」が大ヒットしている。観客動員数1万人でヒットというドキュメンタリー映画界で、すでに15万人に達した(配給先に確認済)。異なる宗教的背景をもつ5人の女性をクローズアップしていて、日本の漫画家ろくでなし子さんも出演し、注目を集めている。

少女の乳房を焼き潰す慣習「胸アイロン」

本作は、2018年夏、スイスのロカルノ国際映画祭で初上映され受賞したほか、ドイツで開催のドキュメンタリーの映画祭DOKライプチヒでも受賞した。

死の危機があっても、慣習を変えたい

女性器切除はショックで亡くなる女子もいるし、性的な喜びを持てなくなったり身体に悪影響を与えて妊娠できなくなったりする女性もいる。フセインさんはロンドンに住んでいるが、ヨーロッパのムスリムコミュニティーでもこの慣習は続いていると話す。女性器切除についてのワークショップの最中、自身の幼いときの体験を思い出して泣き崩す姿には心が痛む。

日本からは、漫画家のろくでなし子さんが登場する。ヴァギナをアート作品にして公開したために、わいせつだとして逮捕された状況や、裁判で争った経緯が映し出される。ろくでなし子さんは、毎年4月に神奈川川崎市で開催される伝統の「かなまら祭り」(ペニスの神輿が出てくるなど、ペニスが祭りのシンボル)も訪れた。

「私は悪いことをしているのではありません。逮捕時の車中で、悪いことをしたのだから反省している顔をしろと警官に言われました。なぜ悪いのでしょうか。ペニスはよくて、ヴァギナはなぜ公共の場で表現してはいけないのでしょうか」と語る。

作家として成功しベルリンに住むデボラ・フェルドマンさんは、ニューヨークのブルックリン地区の超正統派ユダヤ教コミュニティーで育った。ユダヤ教の戒律を厳守するこの超右派内で、30分会っただけの男性と17歳で結婚。妻としての義務(子を産み育てること)について、そのとき初めて聞かされた。19歳で息子が誕生。

宗教上、日々コントロールされて生活することが自分の将来だけでなく、息子の将来にとっても正常ではないからと、息子と一緒に脱出することを考え、5年かかって実現した。初の著書である自伝『アンオーソドックス』はアメリカでミリオンセラーになり、ほかの言語にも訳されている。

ヴィティカ・ヤダフさんは、ヒンズー教徒の慣習にとらわずに、好きな男性と結婚した。進歩的な家庭で育ち、自分が本当にしたいことをすべきだと言ってくれた両親のおかげで、人権の分野で働くことを決めた。人身売買や強制労働などの課題に従事して、ジェンダー不平等、性暴力、虐待、中絶などの問題にも関心を深めた。

そして、インドでは性の健康についての情報が非常に不足していることから、性教育を促進しようと、「ラブ・マターズ」というウェブサイトを立ち上げた。ヒンズー語と英語の同サイトは、男女ともが愛やセックスについて偏見のない情報を得られるインド初のプラットフォームだ。ヤダフさんは、インドで横行する女性への性的暴行をなくしたり、自由恋愛を奨励するイベントも開催している。ヤダフさんも「ラブ・マターズ」も高い評価を得て、受賞している。

ドイツのドリス・ヴァーグナー(英語によるスピーチ)さんは、近年、次々と明らかになってきたキリスト教の聖職者による未成年者や修道女に対する性的虐待(*)の被害者だ。19歳で修道院に入った彼女に起きた性的暴力(24歳だった)のことを、ほかの修道女たちに話すことができなかった。個性を消し去って常に微笑んでいることが修道女のあるべき姿だと教えられ、もし打ち明けたら、悪いのはあなただと言われることはわかっていた。

幸いにもほかの聖職者が救いの手を差し伸べてくれ(現在の夫)、珍しいことにその修道院が大学で学ぶチャンスを与えてくれたことをきっかけに修道院を離れる決心をした。現在は同じ経験をした被害者たちをケアする仕事をしていて、言葉を発することができない被害者たちたちのためにと映画に出演した。(*カトリック教会トップは事態の深刻さをようやく認め、2月に、カトリック法王フランシスコとカトリック教会の司教たちが、初めて「聖職者による性的虐待に関する特別会議」をヴァチカンで開いた)

男性も見るべし

筆者は本作をチューリヒで見た。女性の観客が圧倒的に多かった。周囲で、この映画を見たという女性の友人たちも、客席には女性ばかりだったと言っていた。同じ女性として、国籍も宗教も関係なく弱い立場にいる女性に関心をもつのは当然だろう。

親戚や知人で本作を見たという男性たちは「これは女性はぜひ見るべき映画だと思うけれど、男性としても考えさせられたよ」と口をそろえていた。女性差別の状況が変化するには、やはり男性の側の意識も変わらなければいけない。

岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

最終更新:4/22(月) 20:17
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