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香取慎吾が正義感を捨てた──映画『凪待ち』現場レポート

4/22(月) 21:41配信

GQ JAPAN

香取慎吾が主演する映画『凪待ち』が2019年6月に公開される。2018年の7月上旬、映画の撮影現場を2日間取材した。

【写真で追う!香取慎吾の映画『凪待ち』撮影現場に密着!】

漁港での撮影

2018年の6月18日から7月上旬までの約20日間、香取慎吾は主演映画『凪待ち』の撮影で宮城県・石巻市にいた。映画の監督は『凶悪』(2013年)、『孤狼の血』(2018年)で日本アカデミー賞の優秀作品賞・監督賞に輝き、現在『麻雀放浪記2020』が公開中の白石和彌、香取とは今作で初タッグを組む。

作品のテーマは「喪失と再生」だ。香取の演じる主人公は“人生につまずき落ちぶれた男”。ギャンブルに溺れた主人公は印刷工場をクビになり、パートナーの女性(未入籍)とその娘とともにかの女の故郷である石巻市へとやってきたばかり。再出発を目指して暮らしをスタートするが、小さなほころびが積み重なり、やがて取り返しのつかない事件が起きてしまう……、とストーリーは展開していく。

取材1日目の7月4日の撮影は、石巻市中心部から東に車で40分ほどの女川町の竹浦漁港でおこなわれた。横幅が全長70mほどの小さな港には3隻の漁船が係留されていた。リアス式海岸の入り江なので、波は穏やかだ。船着場の縁に立って覗き込むと、約4~5mの深さの海底の様子がクリアに見える。ちょうど港にあがってきた60代の海女さんによると、養殖のカキやホヤのほかに、サバやアイナメも上がる港であるという。このとき、時間は12時半ごろだった。

逃げ続ける

曇り空の午後は、主人公役の香取とパートナーの父親役を演じる吉澤健の撮影シーンを見学した。2人が海を見ながら会話する、物語後半の重要な場面だ。色褪せた紺のポロシャツにジーンズ姿の香取は、ウインドプレーカーを羽織って丸椅子に座っていた。顔には無精ヒゲがある。「ほぼメイクをせずに撮影に臨んでいます」と白石和彌監督。撮影の合間に香取に話を訊いた。

「役として映像に映っている僕が、自分でもあまり観たことのない僕だなと思います。今まで演じてきた役柄と比べて、“正義”の部分が圧倒的に薄いんですよ。僕が主演した『忍者ハットリくん』(2004年)にしろ『西遊記』(2007年)にしろ、困った人がいたら次のシーンではひとりで走って追いかけて助けに行くヒーローだった。それが今回の『凪待ち』では追いかけないんです。逆に逃げちゃう。今までなら追いかけて“これが正義だ!”って熱く語って仲間と感涙していたのが、『凪待ち』では追いかけられない自分が悔しくてひとりで泣く。画面上では泣いていないシーンでも、主人公の心が泣いている。演じていてとても痛む役柄です」

取材した日は撮影に入って14日めであった。声のトーンの低いまま香取が話を続けた。

「悔しくて泣いたら、映画やドラマの次のシーンではちゃんと走って気持ちを伝えたりするものだと思うんです。ただ、『凪待ち』ではそれでもまだ追いかけない。逃げてばかりで、ちょっとというか、だいぶ腐っている人物像です。けれどそれが人間の生きる生々しさかもしれない。人はそんなに強くないと思うから。そこから再生できるのか、苦悩の先に小さくてもなにか生きる光が見えるのか。そういう映画になるんじゃないかと思います」

約3分半の長回しの撮影シーンを終えてカットがかかると、白石監督が香取のもとに駆け寄った。間合いやポーズ、目線など細かな動きの相談がはじまった。白石監督は演者だけでなく現場全員に聞こえる大きな声で説明をする。白石監督は、2年以上前から香取と作品を作りたいと熱望していたという。

「香取さんは“スーパーアイドル”なのにどっしりとした存在感を併せ持った稀有な人だと思います。僕は大きな身体の役者さん(香取は身長180cm)が好きなんです(笑)。11歳のデビュー当時から30年間変わらないイメージを貫いているのもすごいし、ずっと気になる存在でした。オリジナル脚本の役柄は香取さんには寄せていません。見てみたい香取さんを描かせてもらいました。僕の過去の作品からハードな内容を想像する人もいるかもしれませんが、『凪待ち』は日常と人間模様を扱った作品です。些細なきっかけで幸せを急に失ってしまった主人公が再生していく姿を表現したかったので、香取さんのスター性を少し消してもらいながら、煮え切らない香取慎吾を見せてもらっています。撮影がはじまって2週間、香取さんは凄みを見せていますよ」

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最終更新:4/22(月) 21:41
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