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「アフリカの奇跡」の国、ルワンダが日本の若者に与えたもの

4/22(月) 7:30配信

Forbes JAPAN

将来起業しようと考えている若者が、学生時代に訪れるべき場所はどこだろうか。多くはスタートアップの聖地であるシリコンバレーと答えるだろう。同地の著名ベンチャーキャピタル500 Startupsをパートナーとしてスタートアップの育成に力を入れてきた神戸市もそう考え、大学生たちを派遣してきた。

しかし、今回、神戸市は学生の新たな派遣先としてアフリカのルワンダ共和国を選んだ。この国は、1994年の大虐殺(ジェノサイド)で、国民の約1割に当たる80~100万人が犠牲になったと言われているが、それから四半世紀、汚職や治安への政策が功を奏し、「アフリカの奇跡」とも呼ばれる経済成長を続けている。

近年、神戸市はルワンダとICT分野での経済交流を続けてきたが、このほど、全国から募集した18人の学生たちをこの国へと送り出した。アフリカの大地と人々が、またルワンダという経済発展著しい国が、日本から訪れた彼らや彼女たちに何を与えたのか紹介しよう。

2月17日、ルワンダのキガリ国際空港に到着した若者たち。彼ら一人ひとりと話をすると、前から漠然とアフリカに関心を持っており、いつかは訪問したいと機会を探っていたという人間が多い。ルワンダのことは知らなかったが、自治体主催という安心感もあり、SNSなどでこの企画を知って、飛びついたとも言う。

若者たちは、現地で2週間、テーマを決めてチームを組み、ルワンダが抱える課題の探索と具体的施策に挑んだ。また、最終日には、ルワンダ政府のICT・イノベーション省の事務次官らにそれらの成果を発表する機会も用意されるなど、刺激に満ちたプログラムを経験した。

中学校でペットボトルのロケットを飛ばす

昨年10月、NASAが提供するデータを活用したハッカソンで優勝した新原有紗(関西学院大学総合政策学部)は、このツアーに参加するにあたって、「宇宙」というアフリカらしくないテーマを選んだ。ICT分野への投資が盛んなルワンダでは、地上の通信網やセンサーに人工衛星を組み合わせた地上監視が拡大していくとひらめいたからだ。

ところが、渡航前、ルワンダの留学生が参加する研修や雑誌記事の情報から、ルワンダでは人工衛星やロケットなどの宇宙の活用を、「先進国の娯楽」だと断じる国民がいることを知った。そこで、ルワンダの国民全体が宇宙の活用を身近に感じ、将来の技術者育成につながる教育活動をしたいと考えた。

新原らのチームは、首都キガリ近郊のカガラマ中学校で、ペットボトルでロケットを製作し、空高く飛ばす教室を実施した。彼女ら自身が驚いたのは、この準備に要したのはわずか1日。前日に、ルワンダの商工会議所の幹部に相談すると、目の前で知り合いの校長に電話をかけ、翌日この学校に行くように言われたという。



日本でこのような教室をするとなると、何週間も前から学校や教育委員会に調整をしなければならない。それゆえ、日本では実施するという発想すら生まれない。30歳以下が75%を占めるこの国の「若さ」が、このスピードと行動力として反映されているのではないかと思ったという。

新原は、生徒たちの宇宙への関心の高さにも驚愕した。生徒だけではない、物理の先生がロケットの飛ぶ原理を、突然、生徒に説明し始めた。それもそのはず、この翌日に英国のスタートアップ企業が、ルワンダを含めた世界6カ国の農村の学校にネット接続を行うための人工衛星を打ち上げる、と現地のマスコミが連日報じていたのだ。
--{ルワンダの課題に刺さった}--
実は、日本もこの分野では一翼を担っている。今年の夏にルワンダ政府が初めて打ち上げる人工衛星は、日本企業と東京大学が開発した。国土の土壌水分量を宇宙から監視し、干ばつ対策に生かしたいという目的からだ。

東京大学航空宇宙工学専攻の中須賀真一教授は、「道路などの地上インフラが未整備なルワンダは、日本のような先進国より衛星活用のメリットが大きい」と話す。中須賀教授は、この国の宇宙へのリテラシーを高めようと、学生向けの衛星づくりのサポートも提案したという。新原らの活動は、見事にルワンダの課題に刺さっていたのだ。

達成できたことも、できなかったことも

保坂遥介(横浜国立大学理工学部)と西尾育海(神戸市外国語大学)の2人は、野菜や果物の仲介や運送コストを下げるビジネスに注目した。彼らは、真っ赤に日焼けし、緑の調理用バナナ25kgを担いで、キガリの中心部にある活動拠点まで運んだ。ルワンダ語の通訳を雇い、農村でバナナ農家と交渉し、やっとのことで現地価格でバナナを買えたと喜んだ。

買ってきたバナナをホテルに持ち込むと、仕入れ値の倍以上で売れた。しかも、生産者が誰に販売して、ホテルが誰から購入するという流通経路も判明した。

保坂は、「大学や部活という看板がないと、自分が何者であるかが説明できなかった。また、当事者意識を持って現地での交渉に挑まなければ、失礼となり、相手も真実を語らない。苦しい経験だった」と帰国してから振り返った。

悔しさを日本に持ち帰った者もいる。卓球選手であり、卓球をこよなく愛する小畑勇斗(阪南大学流通学部)は、日本の温泉旅館やアメリカのコワーキングスペースに置かれた卓球台が人々のコミュニケーションを活発にしているのをヒントに、ルワンダで卓球カフェやバーができないかと考えた。しかし、現地で手は尽くしたが、話が進むことはなかった。

「熱い思い」に素直に反応する国

総じて、今回の参加者は皆、心に「熱い思い」を秘めていた。日本では、前例や慣習、そして周囲の目に束縛され、行動はおろか、発想にすらつながらなかったが、ひとたびルワンダの大地に立つと、思いを「形」にしようと果敢に行動した。そして、若く、成長を続けるこの国も、彼らの行動に素直に反応した。

スタートアップビジネスは、これまで誰も考えなかった発想と、それを検証する行動から生み出される。ルワンダという国は、それがシンプルに率直に行える国なのだと感じたという。

今月5日、参加者の代表4名が神戸市役所を訪問して、3年前にルワンダを訪れて同国との交流をスタートさせた久元喜造市長に現地での体験を報告した。


神戸市の久元喜造市長(左から2人目)に報告した新原有紗(同3人目)と西尾育海(右端)

ルワンダでの熱い思いから、社会のニーズを感得し、実現する方法を学んだ彼らが、次は世界を相手に、どのようなプランを実現させていくのか楽しみでならない。

連載:地方発イノベーションの秘訣
過去記事はこちら>>

多名部 重則

最終更新:4/22(月) 7:30
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