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サブスクリプションの時代にあって古い音楽をディグする意味【西寺郷太のPop’n Soulを探して】

4/24(水) 12:01配信

FINDERS

サブスクリブション時代において重要性を増すキュレイターの存在

過去の連載では80年代から10年代までの音楽シーンを振り返ってきた当連載。音楽配信は完全にサブスクリプションモデルが定着してきた今、あえて、古い音楽をディグ(掘り下げる)ことによって、見えてくるものがあるのではないか。ロバート・ジョンソン、プレスリー、ビートルズ、平成最後の更新となる今回はあえてルーツミュージックとサブスクリプションという新旧織り交ぜた音楽談義をお届けします。

米田:今日は、サブスクリブションとかYouTubeとかで聴ききれないぐらいの音楽に触れることができる今において、古い音楽、いわゆるルーツミュージックを聴くことの楽しさみたいなところを話したいと思うんですけど。

西寺:今は聴きやすい環境ですもんね。僕らなんか、お金なくて聴けないものもたくさんあったし、間違った情報を仕入れてたりしたこともあって。

米田:僕なんかは、80年代後半のバンドブームの時にブルーハーツとか聴いてたわけですよ。それで、ヒロトとマーシーが昔のブルースを聴いてるとかって話をどこかで読んで、地元のタワーレコードに行ってロバート・ジョンソンの1930年代のたっかいボックスセットをなけなしの小遣いはたいて買ったことがあったんですけど、聴いてみると「なんじゃこりゃ? 全部同じ曲やんか。どこがいいんだ!?」と思って。でも、あの頃のそういう体験ってすごく重要だったなって思うんですよ。十代の半ばとかで古いブルースとかフォークとかに触れる、例を挙げるとボブ・ディランの初期とかに触れることができたのは、自分の中では良かったなあって思うんですよね。今の若い世代がどういう音楽のディグり方をしてるのか。郷太さんなりにサブスク時代の戦略ってありますか?

西寺:これは2年も3年も前から言ってることなんですけど、僕みたいなミュージシャンが、SpotifyでもApple MusicでもAWAでもなんでもいいから、専属のキュレイターというか、コンシェルジュみたいになって、いろんなものを伝えていくみたいなことをもっとやるべきだと思ってるんです。ちゃんと音楽家の仕事のひとつとしてその能力を認めてもらって。

米田:平たく言えば「西寺郷太セレクション」のプレイリストを作ったり、っていうことですかね。

西寺:でまあ、僕もプリンスやニュー・エディションなど、宇多丸さんのラジオ「アフター6ジャンクション」で話したものでプレイリストを作ったりとかしてたんですけど、ノーナをプッシュしてもらうついでにみたいな流れの中でしかできてないんで。本当は、僕だけじゃなくいろんなミュージシャンや、音楽をよく理解しているライターやジャーナリストが、ひと言コメントとか付けながら、歴史をちょっとしゃべったりして番組のように展開してゆくって、すごくいいと思うんですけどね。MCとして僕が参加してすぐの頃、4年から3年前の「WOWOWぷらすと」って番組はそんな感じだったんですけどね。

米田:サブスクリブションに関して、ノーナ・リーヴスは積極的というか、旧譜も聴けるようになってますよね。

西寺:個人的にはサブスクがめっちゃ好きだし、ヘンな言い方ですけど、それでノーナも全部聴けるようにするのが精神衛生上いいっていうか。ノーナもワーナーに復帰する数年前までレーベルや時期によってはCDとしては廃盤になってたりで、そういう盤を手に入れたかったら中古を探さなきゃいけないわけです。実際に中古もそれなりの値段を保ってるんで、貴重なものを手に入れる「宝探し」感はそれでありだなって思ってるんですけど、たとえばツアーとかでは昔の曲から新しい曲までやるので、正規で売ってない曲をやるってやっぱりどこか後ろめたいというか。その点、今、初めて来るような若い子たちは特に、サブスクリブションで聴けるのがありがたいと思うんですよ。

米田:近年のノーナのライヴは若いお客さんがずいぶん増えましたしね。

西寺:そうですね。あと、サブスクリブションのありがたいところとして、たとえば僕が手掛けたアイドルだけでプレイリスト作れたりするんですよね。寺嶋由芙ちゃんや私立恵比寿中学とか、アイドルの仕事を集めたものでもいいし、作家・西寺郷太としてこんないっぱい提供曲がありますよっていうプレイリストが、サブスクリブションだと作りやすい。こっちが聴いて欲しくても、アイドルによくある「初回盤」とかDVD付きの「Type-A」みたいなのでしか聴けないものもあるので、わざわざそれを買わなくても微々たる額とは言え正式に自分の作った楽曲を聴いてもらえるっていうのはとても良いことだし、僕自身もね、リスナーとしてめちゃくちゃ使ってますから。

米田:ノーナって今、海外でも聴かれていたりするんじゃないですか。

西寺:韓国は結構ファンが多いみたいですけど、他の国のファンももっと増やしていきたいですね。幸いにワーナーミュージックはグローバル企業だから、やろうと思えばできるだろうし、それこそ3年前の「PPAP」じゃないけど、例えばジャスティン・ビーバーくらいの波及力を持つミュージシャンがノーナを聴いて「いいね!」って紹介したら、それが数日で何百万、何千万、何億再生っていく可能性だってあるわけじゃないですか。そういう意味では全然日本人のアーティストも、いわゆる日本的な売り方を考えなくても曲を広めることができる。誰にでも起こりうるというか、普通に会社勤めをしている人が作ってる曲であっても、見つけられ方によってはワールドワイドなものになるっていうか。かなり普通の意見ですけどね(笑)。

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最終更新:4/24(水) 16:31
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