ここから本文です

黒字化達成 JR貨物・真貝康一社長が語る「西日本豪雨災害を乗り越えて」

4/24(水) 6:00配信

文春オンライン

 国鉄分割民営化から32年。昭和の終盤に発足した7つの鉄道会社の中でも、当時経営基盤がとりわけ脆弱で、「余命幾ばくもない」と囁かれていたJR貨物(日本貨物鉄道株式会社)が、平成の終盤に息を吹き返した。

【写真】この記事の写真を見る(18枚)

 不動産事業など鉄道以外の収入で凌いできた同社。抜本的な経営改革に取り組み、2016年から本業の鉄道事業が黒字に転じたことで、連結経常利益は100億円を超えた。昨年度(2018年)こそ山陽本線で発生した天候災害で大きなダメージを受けたが、それでも連結経常黒字を確保できる見通しだ。

 そんな好調の背景には、深刻化するトラックドライバーの減少や、二酸化炭素排出量の削減に取り組む顧客(荷主)企業の思惑もある。

 急速に体力をつけて令和に乗り入れるJR貨物。その現状分析と展望を、真貝康一社長に語ってもらった。

「変えるをよし」の企業風土が自信をもたらした

――昨年7月に起きた西日本豪雨災害で山陽本線が不通となり、JR貨物は大打撃を受けながらも、経常黒字を達成する見通しです。

 真貝 首都圏や関西圏と九州を結ぶ山陽本線の貨物列車は1日あたり往復54本が走っており、当社にとってまさに大動脈の路線。これが止まると1日あたり約1億円の売上がなくなります。昨年度の災害では、123億円の減収になりました。鉄道を利用していただいているお客様には大変ご迷惑をおかけし、災害対応の重要性を再認識した年でした。

 鉄道事業全体の年間売上が約1400億円なので、1割弱を失ったことになり、ダメージは甚大です。それでも黒字にできる見通しであることは、これまでの社員全員での経営改革・業務改革・業務創造プロジェクトなどの取り組みにより、企業としての体力が付いてきたことを意味します。特に、「変えるをよし」という企業風土になってきたことが大きく、社員にとっても未来に向かっての大きな自信になると思います。

さらなる被害が予想される南海トラフ地震への対策

――普段は貨物列車の通らない山陰本線を使った迂回運転などの「応急処置」も話題になりました。

 真貝 今回の災害では、広範囲に、同時ゲリラ的に線路が流されたことで被害が拡大しました。しかも、がけ崩れと河川の氾濫が同時に起きたため、線路だけでなく道路までが何カ所も寸断された。線路をなおす工事車両が現場まで入れないので、まず道路を修理して、それからようやく線路の工事に手を付けられるという状況となり、復旧までに時間がかかってしまいました。

 迂回列車の他にもトラックや船による代替輸送を行いましたが、それでも確保できた輸送量は通常の3割弱に過ぎません。可能な限り輸送量を確保すべく努力をしましたが、鉄道、船、トラック、航空機と、それぞれの特性を生かした平常時の輸送体系が出来上がっている中で、大規模災害への緊急対応には限界があることも事実です。今後は、輸送モードごとの個別対応だけではなく、貨物輸送にかかわるすべての輸送モード全体で、相互補完し合う災害時の対応策を考えていく必要もあると思っています。

――不通期間が100日に及ぶのは、阪神淡路大震災の時を超えました。

 真貝 阪神大震災の時は75日、東日本大震災は42日にわたって貨物列車を走らせることができませんでした。今回はそれらを凌駕する規模で、過去最大級の影響を受けたことになります。

 そう考えると、いずれ来るであろう南海トラフ地震への対策は急務です。そのためには災害に備えた対策が不可欠で、これについては利用運送事業者とともに国に要請をしました。国は3年間で7兆円の災害対策の緊急対策費を準備し、これには鉄道への予防保全対策費も含まれています。

1/3ページ

最終更新:4/24(水) 6:00
文春オンライン

記事提供社からのご案内(外部サイト)

あなたにおすすめの記事