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リリースが「前」で、球も速い。SB高橋礼は東京五輪の“秘密兵器”。

4/24(水) 10:31配信

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 月間MVP、との声にホークスの高橋礼は「全然(笑)」と照れながら返した。

 いや、遠慮など要らない活躍だ。開幕から4度先発して4勝0敗、防御率1.44に誰が文句をつけるだろうか。故障者続出の苦しすぎる日々だからこそ、余計に価値が高まる。決して過言ではなく、彼を救世主と呼びたい。

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 プロ野球の歴史上でも稀な長身アンダースローの投手だ。身長188cmの大きな体をぐっと折り曲げて、流れるような投球フォームから地面スレスレのところでボールを放つ。

 「中2の冬、チームのコーチのアドバイスで横手投げに変えて、そこから徐々に腕を下げていきました」

 いきなり今の投げ方になったわけではない。少年期は本格派を目指して野球に打ち込んだ。しかし、球速は伸びず、コントロールもいまいち。中学ではチームの4番手投手に甘んじており、憧れよりも実をとった。

伸びた球速、リリースは極めて「前」。

 体の特性が合っていたのか、もちろん継続的な努力があってこそだが、球速は驚くほど伸びた。

 専修大学時代は141キロをマーク。プロ1年目の昨年、最速は146キロへと更新した。

 「僕の1番の武器はストレート。押せるところまでは直球で押していきたい」

 下手投げの常識といえば、スピードは出ないが浮き上がる軌道で相手を惑わせて打ち取るというもの。近年では渡辺俊介がその代表格で、現在米球界でプレーする牧田和久が130キロ台中盤を出しただけでも「速い」と騒がれた。その意味で高橋礼は規格外の速球派ということになる。オールドファンは通算284勝を誇る山田久志の投球スタイルを思い起こすという。

 また、下手投げは一般的に、上手投げに比べてリリースポイントが打者に近くなる。高橋礼の場合は身長188cmだから当然手足も長く、どんな投手よりも極めて「前で」ボールを離していることになる。打者の体感速度は上手投げの140キロ台とは比べものにならない。

相手が嫌がることをする。

 また、高橋礼が勝てている理由を探ると、彼のマウンドでの思考法がじつに興味深い。

 今春キャンプの練習試合登板後のコメントを聞いて、なるほどと納得した。

 「まだフォームで納得していない部分は大きかったです。でも、試合の中でそれは関係ないと思っています。気持ちよく打たせないのがアンダースローの特長。自分の感触は良くなかったけど、相手バッターの反応は嫌がっているように感じました。言ってしまえば、僕には『自分』というものがない。バッターが嫌がるのが自分のやるべきことなんです」

 近年はフォームに拘る投手が多い。ホークスでもブルペンには大きなモニターが設置されるようになった。投げてから数秒遅れで撮影したものが流れるために投手陣には大変好評だ。いかに自分の身体にあった的確な使い方ができるかは大切だ。ボールのスピードも質も変わってくるし、故障のしにくさにも繋がってくる。この考えが浸透しているのは実に正しいことだ。

 しかし、試合中のマウンドにもそれを持ち込む投手も多くなっている。

 プロ野球ではないが、ソフトボール金メダリストの上野由岐子から聞いた言葉を思い出した。

 「ブルペンで求める100点と試合中の100点ってまったく違うんです。練習は自分が納得できればいい。だけど、試合では自分がどれだけ気持ちよく投げたところで打たれてしまったら何の意味もないんです。どれだけ違和感があったとしても、ゼロに抑えればそれが正解なんです。たぶん国語と算数で100点を目指すくらいの違いがあるんじゃないですかね」

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最終更新:4/24(水) 18:05
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