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「日本は後進国、台湾は先進国」―近代化遺産の「懐旧」的活用術を台湾に学ぶ

4/25(木) 12:12配信

nippon.com

野嶋 剛

近代化遺産の活用で先行する台湾

私の著書が台湾で刊行されたのを機に、台湾でプロモーション活動を行なった際、あるイベントにゲストで呼ばれた。場所は台北市の「華山文化産業園区(華山1914文創園区、華山クリエイティブパーク)」。連日のように開かれる講座や優れた空間性が評判を呼んでいる独立書店(大手資本が入っていない書店)の「青鳥書店」が会場だった。実は青鳥書店で講演するのは3度目なのだか、いつも会場は熱心にメモを取る若者で満杯だ。ここでは講座、コンサート、展示が毎日何件も開催され、青鳥書店のようなユニークな書店やおしゃれなショップ、レストランがそろい、知的刺激を求める人々やデートの男女、家族連れでにぎわっている。

同パークの土地はかつて1914年に建設された日本の酒工場だった。戦後も工場は稼働を続けていたが、移転で一時は荒廃していた。そこに大改装の手が入り、古い建屋の味わいを残したクリエイティブ空間に生まれ変わったのが1999年。いまや年間のイベント回数が2000回を超え、台湾を代表する観光地としてガイドブックにも載る台北きっての人気スポットに成長した。

この華山1914文創園区は、見捨てられて価値のなくなったかにみえた近代化遺産が、巧みな活用術によって地域をけん引する最先端のスポットに生まれ変わった象徴だ。そして、日本には残念ながらこうした場所はまだ少ない。

過去、経済などの分野で台湾が日本から学ぶ局面が多かったのは事実だ。アジアには各国の時差のある成長ぶりを、雁(がん)の飛ぶ姿に例えた「雁行」と呼ばれる発展形態があった。日本が先頭を飛び、その後ろに台湾を含めた「4つの小龍」などアジアの各国・地域が飛び、その他の国々が続く、というイメージだ。

確かにそういう時代はあったのかもしれない。しかし、最近はどの国も先進国レベルになるか、そのレベルに近づき、単なる「発展」という概念では説明しきれない時代になった。その中で近代化遺産の活用という意味では、台湾と日本との間では逆転現象が起きているのである。

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最終更新:4/25(木) 12:12
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