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【世界卓球】世界6位・石川佳純の敗戦。だが、まだブダペストの舞台に彼女は立っている

4/25(木) 17:22配信

卓球王国

世界で最も美しいスイングであるがゆえの弱点がある

 石川佳純ほど、美しい身体の動きとボールの軌道を作る選手はいない。身体の左右のバランス、その無駄のないスイングは「世界で最も美しい卓球フォーム」を形成している。しかし、逆に対人競技の卓球ではそれが弱点になることもある。卓球はフォームの美しさを競う競技ではなく、相手のミスを誘う戦術的なスポーツなのだ。
 彼女の美しいフォームから放たれるボール軌道の美しさゆえに、相手はやりにくさを感じずに合わせやすくなる。

 新たに求められるのは、その美しさを壊すほどの「作戦としての意外性」という、一見矛盾するような高度なものだ。相手の逆を突くコース取りやモーション、相手を惑わす一撃……しかし、これらは彼女がジュニア時代に持っていたものだ。2009年の世界選手権で実質的な世界デビューを果たした石川が、その後、ストイックに自身の卓球を鍛えれば鍛えるほど、「より速くより強い卓球」を求めれば求めるほど、彼女の生真面目な性格ゆえに彼女の卓球は死角のない速い卓球の方向性に進んでいき、いつしか意外性の部分は消えていった。

 09年以降、石川は10年間、日本女子卓球の中核としてその屋台骨を支えてきた。その間、先輩である福原愛や平野早矢香とともに戦い、五輪んでメダルもつかんだ。そしてその二人が引退すると、彼女は後輩である伊藤美誠、平野美宇としのぎを削ってきた。
 彼女が中学生でいきなり全日本選手権の一般で3位に入り、日本のトップへ飛びだしてきた頃、「天真爛漫な天才少女」と卓球王国誌でも表現していた。そんな天才少女も大人になり、今や日本の顔として風格さえ漂う。そして、その肩には日本のエースとしての重圧がのしかかっていた。

 シングルスで敗れた瞬間、天をあおぎ、呆然とした表情でベンチに戻った石川佳純。ミックスゾーンで自分を責めるかのように「情けない」と言葉を発した石川。時間が経てば経つほど、「90%くらい勝っていた」自分を責め、「なぜ自分が負けるのか」という問いを自分へぶつけるのだろう。

 しかし、石川のブダペストはまだ終わっていない。25日のブダペストの夜に吉村真晴との混合ダブルス準決勝が待っている。24日、朝10時から夜11時過ぎまでの長くタフなタイムスケジュールを記者に問われた時も、彼女はひと言も弱音を吐かなかった。「みんな一緒です。そういうタイムスケジュールで自分が救われたこともありますから」。日本の女王としての矜持は染みついたものだ。
 パートナーの吉村は「自分のミスを石川さんがかばい、救ってくれた。彼女にボールを何とか回せば、決めてくれる」という絶対的な信頼感を寄せる。

 勝った瞬間のあの可憐な笑顔と、試合中の鬼気迫る表情のギャップこそが「人間・石川佳純」を表す幅であり、魅力だ。彼女の、卓球を極め、勝利をつかもうとするひたむきな姿勢に心を打たれない人はいない。 
 石川佳純はまだブダペストの舞台にいる。その舞台から最高の笑顔を日本に届けるはずだ。

今野昇

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最終更新:4/25(木) 17:22
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