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ジョアン・シミッチ。そのプレーの真髄は「捻り」にある。

4/25(木) 12:16配信

footballista

相手のタイミングを外す「浮き球」

 ブラジル人MFらしく、相手の頭上を越えていくような浮き球も得意としているシミッチだが、「展開」の場面では「球足の遅さ」が弱点だ。味方が受けやすいような弾道の高いキックが多いので、相手守備陣のスライドが間に合ってしまうことも多い。サイドチェンジの面でも「6番」として求められる仕事は難しいかもしれない。

 一方で、崩しの局面で「タメ」と組み合わせた浮き球は絶妙の一言。スペースに間に合うような速度で送り込まれる縦パスは、味方のアタッカーにとっては最良のアシストパスだ。

 視野の広さだけでなく、前線に走り込むアタッカーの位置やDFラインの裏に生まれているスペースを把握する「視野の深さ」に定評があるMFは、カウンターの局面でも一撃必殺の縦パスを供給する。

 長いボールを供給する時間的な余裕がない状況では、捻りによるグラウンダーとの使い分けも可能で、コンサドーレ札幌戦では絶妙な繋ぎのパスを披露。カウンターの起点としても狭いスペースを有効活用し、狭いコースを通す判断力を見せつけた。スペースへのボールと楔の組み合わせは、相手守備陣に迷いを生むことになるだろう。

 南米の選手が得意とする「ラ・パウザ」の使い手は、崩しの局面を担うことになるだろう。ボールの受け方やボディアングルにも工夫を凝らしながら相手に狙うスペースを絞らせない知的なMFは、名古屋グランパスの攻撃と守備を繋げる重要な役割を果たしている。

 一方で、切り替えの遅さとスピード不足には不安も残る。被カウンター局面では、戻りが間に合わない場面も少なくない(コンサドーレ札幌戦でも、2ボランチが出遅れる場面が散見された)。

 読みの鋭さでボールを奪うスキルは兼ね備えるが、フィジカルバトルにも不安は残る。常に背筋が伸びた状態でボールを受けるスタイルは同じブラジル出身のオスカルを想起させるが、足下にボールを保ちながら駆け引きを狙うスタイルは「後継者」として期待された元ラツィオのエルナネスに近い。エルナネスは欧州で攻撃的なポジションに移ることで輝きを放ったが、シミッチはおそらく「2ボランチの一角」に固定されることになるだろう。

 3センターにおけるアンカーと比べれば「攻守両面でのタスク」は限定されているが、ポゼッションチームにおける攻撃のスイッチとしての重責を果たさなければならない。例えばチェルシーでのジョルジーニョと同様に、相手チームの厳しいマンツーマンマークを受けることが予想される。

 ボールを受けるタイミングでの駆け引きやドリブルも苦手ではないが、マンツーマンのマークを回避する武器は乏しいこともあり、チーム全体としての工夫が必要になるだろう。その局面で「8番」として高い位置に進出することで、マークを敵陣にまで引き下げるようなプレーも求められるかもしれない。ポルトガルリーグ自体は優れた得点感覚で評価されたように、25歳のMFは多様な可能性を示している。

 名古屋グランパスを新たな戦場に選んだ男は、すでに期待以上の実力を示している。前線に多くのアタッカーを送り込む指揮官のスタイルは、「縦パスのスペシャリスト」にとっても理想的な環境だ。イタリアでは実力を発揮し切れなかったMFが、ついに最も輝けるチームに辿り着いたのだろうか。

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最終更新:4/25(木) 12:17
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