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卒業式の後、生徒から感謝のお手紙を手渡されました。あとで、ほのぼのとした気持ちで封筒をあけるとギフト券が…。これってワイロ!?

4/26(金) 8:25配信

教員養成セミナー

【設例7】卒業生(の保護者)からの贈呈品は賄賂?

卒業生からもらった手紙の中に「3年間のお礼」として商品券が同封されていました。受け取ってしまってよいものでしょうか。


1 社交儀礼は賄賂に当たらないという判例も
 公立学校教員は公務員なので、その職務に関して賄賂を受け取った場合は処罰されます(単純収賄罪・刑法第197条第1項前段)。したがって、公立学校教員が卒業生の保護者から賄賂を受け取れば処罰される可能性があります。では、設問のような「ギフト券」といった贈呈品の場合も賄賂に該当するでしょうか。

 一般には、得られる価値の少ない社交儀礼に該当するような物品の接受は賄賂に該当しないと考えられています。比較的少額の金品などがこれに該当します。しかし、社交儀礼の範囲内といえども、明白に職務との対価性(見返り)が認められる場合は、賄賂罪に該当するとも考えられています。

 実は、謝礼の賄賂性が争われた最高裁の事案には、国立附属中学校の教員が被告人だったものがあります。この事案は、教育熱心な学級担任の先生が、保護者から謝礼として当時の給料の約半分に当たる金額相当の小切手を受け取ったものでしたが、最高裁は保護者と教師との間の社交儀礼の範囲内であると考える余地を認めており、賄賂性を否定しました。


2 公立学校は教委のルールに従う
公立学校教員への謝礼は他の公務員への賄賂と異なり、難しい問題があります。なぜなら、私立学校教員であれば、たとえ保護者から謝礼を受け取ったとしても何ら処罰されないからです(各学校の勤務規則にもよります)。公務員かそうでないかの違いを除けば、子供や保護者に対する教員の仕事内容は公立と私立でほとんど違いはありません。つまり、子供や保護者の教員への感謝の気持ちに、「公立」「私立」の違いは関係ないのです。にもかかわらず、公立学校の先生に対して保護者が謝礼を渡せば先生が処罰されるというのは、子供がお世話になったと感じている保護者からすれば、その気持ちを形で示せないもどかしさがあるかもしれません。

 公立学校の多くで、保護者から金品その他の贈呈品を受け取ることや、飲食等の接待を受けることを禁止するルールが教育委員会によって定められています。最高裁は賄賂罪の保護法益(賄賂罪を規定することで守られるもの)を公務員の職務の公正とこれに対する社会一般の信頼であると考えており、教育委員会は保護者からの贈呈品や接待を受けることは公立学校教員としての職務の公正と信頼を害すると考えているようです。このような実務状況に従えば、設問のように贈呈品の中身がギフト券であると確認した教員は、後日、保護者に返還することが最も適切な対応ということになるでしょう。

 しかし、保護者が在学中にお世話になった先生への感謝の気持ちを「ギフト券の贈呈」として示したことに対して、先生がそれを受け取ることが、本当に公立学校教員としての職務の公正と信頼を害することなのでしょうか。子供たちのために一生懸命頑張り、その結果として保護者から感謝の気持ちを示されるのは、教員にとって大きなモチベーションにもなるでしょう。それによって教員の職務の公正と信頼が一 層強まる可能性も否定できません。私自身も教員ですが、保護者から感謝の気持ちを示されることは、教員としての自覚と責任感を一層強める契機になっていると感じます。

 論点が少しずれますが、問題に感じるのは、現状、教員の仕事は、子供たちのためにどんなに時間を割いて頑張っても正当な金銭的評価を受けるわけではないという点です。教員は医師や弁護士と同じく専門職である以上、誰がやっても同じ結果になる仕事ではありません。個性が求められる仕事であり、この点で一般的な事務職公務員とは異なります。学級経営や生徒指導、学習指導など、子供たちのために頑張った教員が報われるような給与体系を構築することこそが、保護者の教員に対する感謝の気持ちを無駄にしないことにつながるのではないでしょうか。


※ 出てくる人物名や団体名、設定は架空のものです。

著・監修 神内 聡
弁護士・高校教員。教育法を専門とする弁護士活動と東京都の私立学校で高校教師を兼業する「スクールロイヤー」活動を行っている。著作に『スクールロイヤー 学校現場の事例で学ぶ教育紛争実務Q & A170』(日本加除出版)など。また、N H Kドラマ「やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる」の考証を担当。

『月刊教員養成セミナー 2019年5月号』 
「スクールロイヤー神内聡の教師のための法律相談」より

最終更新:4/26(金) 8:27
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