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「林ヲ営ム」が示す、これからの林業。

4/26(金) 7:04配信

オルタナ

林材ジャーナリスト 赤堀楠雄氏の「林ヲ営ム」を読んだ。赤堀氏は、林業・木材産業界の専門新聞社に勤務後、1999年からフリージャーナリストとして森林や林業、木材、木造住宅等をテーマに日本全国で取材を行い、執筆の他、セミナーや講演会の講師としても活躍している。豊富な知識とていねいな取材による提言は多くの支持を得ている。(オルタナコラムニスト=岩崎唱)

■「業」ではなく「営

タイトルは「林ヲ営ム」。「営林」を書き下し文風に読んだもの。「営林」というと、現在は森林管理署という味気ない名称に変更されてしまったが、かつて林野庁の下で国有林の管理・経営にあたっていた営林署を思い浮かべる。

さて、赤堀氏のこの著作は今の林業について、様々な考察やていねいに取材した内容をまとめたものだが、林業の「業」ではなく「営」にしたのには訳があるのだろう。「業」とは生活の中心をささえる仕事、くらしの手だての意味。これを「ぎょう」でなく「ごう」と読むと仏教用語で、身・口(く)・意が行う善悪の行為、特に悪業。または前世の悪行の報い、という意味になる。こっちの方が今の林業に合っている?なんて思うのは自分だけか。

一方、「営」にも「仕事をする、事業をする、物事をする」という意味があるが「こしらえる、作りととのえる」という意味もある。著者の赤堀氏が「林ヲ営ム」というタイトルにしたのは、林を仕事にするだけではなく、作りととのえることの重要さを訴えたかったからだと思う。

■今までの林業は「引き算」一辺倒の経営

この本が書かれた背景には、苦境に陥っている林業界がある。林業は、木を植えて育てて伐採し、主に木材の材料として販売して利益を得る事業だ。しかし、材価が下落する中で、木を伐ったり、搬出したりするコストを売値から差し引くと林家(森林所有者)の手元に残るお金はごくわずかだ。いや助成金や補助金がないと赤字という場合だってある。むしろ、その方が多いだろう。これでは、林家は伐採後に苗を買って植え、何十年も世話をして森を育てていこうという気にはならない。

というか、やりたくてもできない。こうした中で何とか林業経営を成り立たせようと路網整備や機械化による効率化や列状間伐などコストを下げるための様々な取り組みがなされてきた。

「日本の林業は『引き算』一辺倒での経営に傾斜して、ここしばらくは歩んできたのである。(中略)そうではなくコストダウンの効果を際立たせるためにも、少しでも高く売れる木を育てる。その木が使われるようなマーケットをつくる。そんな『足し算』、あるいは『掛け算』にもつながるような取り組みこそが、今の日本林業には求められている」と本書で赤堀さんが指摘しているように、コストダウンではその場しのぎにはなっても根本的な問題の解決にはならない。

では、どうしたらいいのだろう。その一つソリューションがサブタイトルになっている「木の価値を高める技術と経営」ということになる。

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最終更新:4/26(金) 7:04
オルタナ

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