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ザ・クロマニヨンズの成長を目指さず円熟を拒む存在感 『レインボーサンダー』ツアーを見て

4/26(金) 11:17配信

リアルサウンド

 2018年10月10日発売のニューアルバム『レインボーサンダー』のリリースツアー、前半と中盤は各地のライブハウス、後半は各地のホールを回る全54公演の53本目、4月17日東京・中野サンプラザ。『レインボーサンダー』収録の12曲すべてと、「エルビス(仮)」「ギリギリガガンガン」等の代表曲、アンコールの3曲をあわせた計23曲を、ザ・クロマニヨンズはプレイした。

【ザ・クロマニヨンズ写真】で振り返る、『ザ・クロマニヨンズ ツアー レインボーサンダー 2018-2019』

 1曲目の「おやつ」から6曲目の「サンダーボルト」まで、『レインボーサンダー』の(甲本)ヒロト曰く「A面」の6曲をそのままの順番で演奏。そして「グリセリン・クイーン」「どん底」「スピードとナイフ」「時のまにまに」をはさんでから、「恋のハイパーメタモルフォーゼ」から「三年寝た」までーーつまり『レインボーサンダー』の「B面」を曲順どおりに5曲続けた。後半の4曲を経て、『レインボーサンダー』ラストの「GIGS(宇宙で一番スゲエ夜)」で本編を締める。アンコールは、長らくライブのピークポイントであり続ける「オートバイと皮ジャンパーとカレー」「タリホー」「ナンバーワン野郎!」の三連発だった。

 前半のMCでヒロトは、ある程度のキャリアを積んだグループは最新アルバムの曲をほとんどやらない、(The Rolling Stonesで言うところの)「サティスファクション」とか「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」とか「(悲しみの)アンジー」ばかりやる、という前置きをした上で、「ザ・クロマニヨンズはまだまだ駆け出しです! 新しいアルバムの曲もシングルのカップリングの曲も全部やりたい! これからがんばっていくバンド、ザ・クロマニヨンズの姿をぜひ見ておいてください!」と宣言した。

 中盤の「モノレール」の間奏では、マーシー(真島昌利)のギターとヒロトのハーモニカでバトル。後半ではヒロト、「やりたがってるのは誰だ! やりたがってるのはあの男!」というコールでひとりずつメンバーを紹介し、その末に「おまえらは誰だ? 自分の名前をでっかい声で言え!」とオーディエンスに名前を叫ばせ、「全員覚えたぜ! 中野に集まってくれた仲間がやりたがってるぜ!」とさらにあおる。

 アンコールでは「とうとう元号も変わりますが……あんま関係ない。楽しんでいきましょう、俺たちだけでも楽しんで行きましょう、そしてそんな仲間を増やしていきましょう!」と呼びかけてから、前述のキラーチューン三連打に突入した。

 桐田勝治は「三年寝た」ですさまじいドラムソロを聴かせる。コビー(小林勝)は右ヒジがほぼ伸びきるダウンピッキングでベースを唸らせまくった(初めて観た時はドレッドヘアでベースを高く持ってスラップしまくってたよな、と、今でも思い出してしまう。27年くらい前の話です)。「ギリギリガガンガン」でコビーと共にステージ前方へ出たマーシーは、アンコールは上半身裸で登場し(これもコビー、そしてヒロトとお揃い)、最終曲を終えるとあのやわらかい口調で「またねー」と言ってステージを下りた。そしてヒロトは終始、歌ってハーモニカを吹いてジャンプして転げ回り、幾度となく「やりたいやりたいやりたい!」「ほかのアルバムからやらしてください!」「B面やらしてください!」「やりたがってる奴は誰だ!」「やるぞやるぞ!」と「やりたい」方面の言葉を口にする。

 始まったのは19時10分頃、アンコール3曲が終わったのは20時30分すぎ。1時間半弱の、いつもとおんなじ、しかしそれでいて最高としか言いようのない、ザ・クロマニヨンズの時間だった。

 成長を目指さず、円熟を拒み、パンクの、ロックンロールの、初めてギターを持ってジャーン! とやったファーストインパクトの瞬間に留まり続けようとする、あるいは戻り続けようとするバンド。という、むちゃで荒唐無稽な願いを、現実にしてしまうバンド。ザ・クロマニヨンズが、そんなマジカルとしか言いようのない音楽であることは、結成から現在まで14年ぐらい続いているわけだし、もっと言えばヒロト&マーシーがこのバンドの前にやっていたザ・ハイロウズも中盤くらいからそういうものだったとも言えるし、今さらここでなんか言ったり考えたりすることでもない気はする。考えてもしょうがないという結論は、何年も前から、何回も出ているので。

 ただ、英米も国内も含めて、きっとこれまでも数限りなく存在してきた、原初のままの形でパンクやロックンロールをやろうとしてきた数多のバンドたちのそれと、ザ・クロマニヨンズのそれは、あきらかに違う気がしてならない。同じだったらもっと安心して観れるし、安心して聴けると思う。「ああ、このパターンね」「こういうことがやりたい人たちね」というふうに。

 音もリリックも存在のありかたそのものも、こんなに簡単で、単純で、素朴なのに、ザ・クロマニヨンズは謎なままだ。いや、「まま」じゃない。その謎は深くなる一方なのだ。

兵庫慎司

最終更新:4/26(金) 11:17
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