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娘の死後に600万円の借金が発覚…「返済義務」は誰にある?

4/26(金) 8:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

今回は、長らく音信不通であった娘の死後、600万円の借金が発覚した「負債相続」の事例を見ていきます。※本連載では、司法書士法人ABC代表で司法書士の椎葉基史氏の著書、『身内が亡くなってからでは遅い 「相続放棄」が分かる本』(ポプラ社)から一部を抜粋し、さまざまな事例をもとに、「負債相続」の仕組みや解決方法、「相続放棄」の具体的な手続き等について解説します。

「音信不通」の娘と再会を果たしたが…

 事例  どうしても相続放棄ができない親心

さて、相続というと、亡くなった親から子供へ、というイメージが強いですが、逆のこともあり得ます。つまり、子供の財産を親が相続するケース。負債相続にももちろん、このケースがあります。

田中徹さん(56歳)、祥子さん(55歳)は、ひとり娘のあかねさん(25歳)を溺愛していました。ところが両親の期待と愛情が重荷だったのか、あかねさんは18歳の頃に家を飛び出してしまったそうです。

7年もの間、音信不通の状況が続いていましたが、念願の再会を果たした時、あかねさんは、精神的な病を抱えていました。再び一緒に暮らし、娘の病を癒してやりたい。そう考えたご両親がそのための準備を始めていた矢先に、あかねさんは自ら命を絶ってしまったのです。

最愛の娘を失った悲しみの中、田中さんご夫妻は、あかねさんが600万円ほどの借金を背負っていたことを知ります。田中さんご夫妻にとって、この600万円という借金は簡単に支払える額ではありませんでした。そもそも娘が遺した借金の返済義務は誰にあるのか、という疑問も持った田中さんご夫妻は私の元に相談にいらっしゃったのです。

結論から言うと、この場合、あかねさんの負債を相続するのはご両親です。

あかねさんは独身で配偶者がなく、第1順位の子供もいないので、第2順位のご両親が相続人となります。とはいえ幸い、相続が発生してから、つまりあかねさんが亡くなってから、まだ3カ月は経過していません。

しかも、あかねさんには貯金もなく、資産と呼べるようなものは残っていませんでしたので、私は田中さんご夫妻に相続放棄の手続きをとることを勧めました。同じく第2順位に当たる田中さんご夫妻のご両親はすでに他界されていましたし、あかねさんにはごきょうだいもいませんから、田中さんご夫妻が相続を放棄した時点で、あかねさんの借金は正当に帳消しになる可能性が高いからです。

ところが、後日お会いした田中さんご夫妻は、相続放棄はしないことにした、とおっしゃいます。その理由を尋ねると、「放棄」と言う言葉が、大切な娘を突き放すことを意味するような気がしてならず、娘が可哀想でならない、どうしても受け入れられないと言うのです。

もしかしたら、娘はこの借金に悩んで心を病み、命を絶ってしまったのかもしれない。だとしたら、せめてそれを自分たちで支払っていくことが、娘を救ってやれなかった自分たちに課された使命なのではないか──。

ご夫妻はそんなふうに考えていらっしゃいました。

とはいえ、田中さんご夫妻にとって、600万円もの借金を背負うことは、これからの人生を重い十字架を背負って生きることを意味します。私は何度も考え直すことを勧めましたが、ご夫妻の決意は固く、結局、相続放棄の手続きは見送ることになりました。

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最終更新:5/14(火) 11:12
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