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巨額のカネが闇へ…「バブルの怪人」と回収人の死闘はまだ続いていた

4/26(金) 9:00配信

現代ビジネス

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「整理回収機構」。その名をご記憶の方もいるだろう。バブルの名残りとも言うべき不良債権の回収でメディアをにぎわせた彼らは、はたしてどうなったのか。熱に浮かれ、踊った「バブルの怪人」たちと向き合うその戦いに光を当てたノンフィクション『トッカイ バブルの怪人を追いつめた男たち』を上梓した清武英利氏が、その知られざる存在に迫った経緯を語った。
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忘却された「国策会社」の存在

 「株式会社整理回収機構」は、注目を集めることを嫌う国策会社である。受付すら施錠したガラス戸の向こうにあり、重要な事実はたいてい開示されない。

 「この会社が約20年前、初代社長の中坊公平氏(元日本弁護士連合会会長)に率いられて、住専(住専金融専門会社)債権をはじめ、日本中の債権回収にあたった」と言えば、50代以上の人々はたいてい、「ああ」とうなずくのだが、その会社が東京・丸の内の新日石ビルや大阪・梅田の高層ビルの一角にいまも存続していることはほとんど知られていない。

 そのうえに、私たちは忘却の徒なので、固くドアを閉ざした回収機構のその部屋の奥で、末野謙一ら名うての「借金王」や「怪商」、ヤクザ、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)などの取り立てがなお続いていることも知らない。

 債権回収の時効は10年だが、その時効が近づくたびに、多額の(時にはなんと1億円以上もの! )印紙代を払って、悪質債務者相手に貸金取り立て訴訟を起し続けていることも知らない。公表もされないのだ。

 それに、回収機構が、暴力団など「反社債権」を、大手信販会社や金融機関からタダ同然で買い取って、その買い取り件数は2018年9月現在で累計753件、総額85億7000万円に達した事実も見落とされている。

 私も3年半前まではそうだった。

「あの組織、まだ生きているよ」

 「整理回収機構を覚えているかね」と、そのとき古い友人は言った。

 「ああ」と答えた。「ぼくは社会部で取材していましたからね」

 本当は忘れかけていて、ひと昔前の記憶の断片を急いでかき集めたのだ。

 新聞記者時代に中坊氏にもニ、三度会って、彼が不良債権回収を託した社員や家族に送った激励の手紙について書いたり、デスク席で関連記事を手直ししたりしたことがあった。

 「あの回収組織だけどね、まだ生きているよ。取り立てをやっている人たちがまだ、いるんだ」

 (えっ)と私は心のなかで声を上げた。驚きの後に、自分のなかに住んでいる、もう一人の私が、(気をつけろ)とささやきかけてきた。私はひとつ仕事を抱え込むと3年は引きずってしまうのである。

 ーーその話を終いまで聞くと、ただで済まなくなるぞ。お前の作家人生なんて残り少ないんだよ(「あなたはいつまで生きるつもりなんですか」と口の悪い編集者に言われたこともある)。

 だが、私の思惑を無視して、友人は言った。

 「あんたが以前、住専や整理回収機構を取材したというんだったら、なおさらだ。山一證券の人たちの物語は本にして、回収人たちの話は本に書かないというのは、ないよね」

 その言葉で私の心の警報音は消えてしまった。

 私は2013年11月に、破綻した山一社員たちの悪戦を『しんがり 山一證券 最後の12人』という本にまとめている。その群像を描いたテレビドラマが、ちょうどWOWOWで放映されていたころだった。

 「後列のひと」と私は表現しているのだが、組織の後ろのほうにいて真っすぐに生きる人々をこれからも描いていくのだ、という気持ちを固めていたので、友人が私の目を覗き込むようにして、「こちらの人たちは取材しないわけ?」と続けた言葉は、強く胸に響いた。

 「山一の清算を手がけた社員や、山一破綻の真相究明にあたった『しんがり』の人たちは、すごいよ。でも、日本中の不良債権を取り立てた人たちも苦労したんだ。バブル崩壊の波を頭から浴びて、あの人たち、ずぶ濡れだったですよ」

 「わかってますよ。少し書きましたけどね、あのころに」

 「いや、わかってない。本当のところは書いてないよ!  やらなあかんでしょ、あんたは」

 知人の声は怒ったように高かった。

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最終更新:4/26(金) 9:00
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