ここから本文です

経営改善に奮闘した社長が「全財産」を失ってしまった理由

5/1(水) 10:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

「会社をたたむ」という選択肢を避けた結果…

◆悪化した会社経営を必死に立て直し続けた社長が行き着いた先は・・・

資金繰りに窮する社長の頭には、当然「会社をたたむ」という選択肢が何度も浮かんだことでしょう。筆者からも、会社を訪問した際にこのような提案をすることもありました。しかし社長は、先代から承継した会社を存続させ、長年勤めてくれている従業員の生活を守らなくてはならないという思いを強くもっていたため、何とかして経営を続けていくことだけを日々考えていました。

平成23年に東日本大震災が起こり、大手親会社からの注文が激減し、いよいよ経営が立ち行かなくなってきたとき、社長はすでに65歳を超えていました。平成27年度の決算では、売上は20年前の半分以下となり、銀行借入金残高はほとんど減ることがなく、役員借入金残高も約8,000万円にまでなっていました。

平成28年度には、社長と同じように年を重ねた従業員に対して、できる限りの退職金を支払って退職してもらいました。また、自社工場を処分した資金により、銀行借入金は返済しましたが、会社に投入した自己資金の回収はできないままです。

社長自身が外部で働いて家族の生活資金を稼ごうと思っても、65歳を超えた人材の雇用機会は少ないのが現状です。ご子息は立派な社会人となり、奥様もご健在でパートとして働くことができたため、何とか生活はできる状態ですが、会社を維持するために増えてしまった個人債務の返済も続いています。結果として、先代から築き上げた会社と財産をすべて失うことになってしまいました。

◆適切なタイミングで「会社をたたむ」という決断をすることの重要性

「会社をたたむ」決断は非常に難しく、決算書の数字には表れない個々の思いも加わり、決断を先延ばしにしてしまう社長は多いでしょう。しかし、売上の低下により資金繰りが悪化してきた時点、人材投資・設備投資ができなくなった時点、取引先銀行から追加融資やつなぎ融資を断られた時点などで、会社の解散や事業譲渡、M&Aなどの方策を具体的に考えるべきです。会社に稼ぐ力さえ残っていれば、その価値が高く評価されることもあります。そして何よりも、社長自身に体力的、精神的余裕があるうちに方向転換を検討すべきです。

然るべき時期に会社をたたみ、経営者自身もしっかりと個人の財産を残した状態で次のステップを踏み出してほしかったと、思わずにはいられません。この事例を教訓とし、「会社を維持・成長させる」ことと同じくらいに重きを置いて、「会社をたたむ」ことについても、その適切なタイミングと方策について、経営者と一緒に考えていかなければならないと強く感じています。

古沢 暢子

税理士法人田尻会計 税理士

古沢 暢子

2/2ページ

最終更新:5/1(水) 10:00
幻冬舎ゴールドオンライン

記事提供社からのご案内(外部サイト)

富裕層・企業オーナー必読!「知識武装し、行動する」ためのWEBメディア。「資産防衛」に関する最新情報とノウハウを配信!

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事