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「上級国民」というネットスラングの大拡散が示す日本人の心中

5/5(日) 16:00配信

NEWS ポストセブン

 この問題は当初、事故で多くの死傷者を出しておきながら、運転手が逮捕されず、マスコミからは「さん」づけで呼ばれるのはおかしいではないか。それは元高級官僚という「上級国民」だからじゃないか。という疑問と怒りの文脈で使われていた。さらに事故の2日後、神戸のJR三ノ宮駅前で市営バスが歩行者2人はね、2人を死亡させるあらたな事故がおきた。そのバスの運転手は駆けつけた警察官により現行犯逮捕され、マスコミ「××容疑者」という呼び方で事件を報じたため、バス運転者のような「一般国民」はすぐさま罪人扱いで、「上級国民」のほうは忖度されてお咎めなしなのか、と怒りにさらなる火がついた。

 実際のところ、東池袋のほうが逮捕されなかったのは、運転手が87歳と高齢かつ事故で怪我を負って入院したからであり、「さん」づけだったのは容疑者でもない(逮捕されていない)個人名に関してはそのように表記するというマスコミルールが存在するからである。だが、そういうことを客観的に説明する記事などが出回っても、聞く耳を持たない人々が大勢いて、ただひたすらに「上級国民」の言葉が独り歩きしていった。

 これから東池袋の事故の捜査が進み、運転者が任意出頭し、書類送検となり、犯罪者として処罰される可能性は大いにあるだろう。ただ、そうなったとしても、「上級国民だから逮捕されなかったんだ」「二人も殺しておきながら罪が軽いのは上級国民だからだ」などの「疑惑」がつきまとうと思う。そう思わせるくらい、この言葉を使う人々の世の中に対する不信感や絶望は深い。

「ニコニコ大百科」によると、「上級国民」は、〈一般国民と対をなす、日本国民の身分を表す概念のひとつである〉とのことだ。2015年に起きた東京オリンピックエンブレム騒動で、盗用が疑われたデザインの説明に際して、エンブレム応募作品の審査員長が「専門家の間では十分分り合えるんだけれども、一般国民にはわかりにくい、残念ながらわかりにくいですね」と発言、その「一般国民」という表現が上から目線だと批判され、対比する言葉として「上級国民」がネット上で広まった。今回の事故にあたって誰がその「上級国民」なるネットスラングを掘り起こしたのかはわからないが、ここまで拡散するとは思いもよらなかっただろう。

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最終更新:5/5(日) 16:00
NEWS ポストセブン

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