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絶滅危惧の「モヒカン」イノシシ、施設で増殖中

5/6(月) 10:31配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

自然の森に戻せるか、フィリピン

 パンクな髪形をした絶滅危惧種、ビサヤイノシシ(学名Sus cebifrons)が、復活の兆しを見せている。

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 オスの体毛がモヒカンのようになることで知られるこのイノシシは、現在、施設で300匹が飼育されており、野生での生息数は不明だ。かつてはフィリピンのビサヤ諸島にある6つの島に暮らしていたが、近絶滅種(critically endangered)となった今では、パナイ島とネグロス島のごく一部に残るだけとなっている。

 1970年代から80年代にかけて、ビサヤ諸島では、貴重な木材を目当てに森林がほぼ完全に伐採された。これによってネグロス島のイノシシの生息地は、元の広さの4%以下、パナイ島では8%以下まで激減した。

 しかし現在、世界中の動物園や保護施設で、野生への再導入を視野に入れたビサヤイノシシの繁殖が順調に進んでいるという。

 早ければ2019年中に、何匹かの個体がフィリピンの野生環境に戻されるかもしれないと、保護団体「タララク・ファンデーション」代表のフェルナンド・グティエレス氏は言う。同団体では、2カ所の繁殖センターでビサヤイノシシ60匹(亜種のSus cebifrons negrinusを含む)を保護している。

「ビサヤイノシシは20年前よりも増えています。人間が脅かすことがなければ、必ず数を回復するでしょう」と、グティエレス氏は述べている。

 ビサヤイノシシは、この地域の重要な存在だ。食物連鎖に欠かせないのはもちろん、森を再生するのにも一役買っている。イノシシは地面を掘って食料を探す際に、土壌に空気を混ぜ込む役割を果たす。また、大きな果実を食べることで、その種を森のあちこちに拡散する。

イノシシを元々いた森に戻せるか

 野生への再導入の準備として、グティエレス氏らは、パナイ島とネグロス島の3つの国立公園の調査を行っている。これらの公園では、伐採後に植えられた二次林が広がりつつある。

 調査では、再導入に適したすみかを探し、補充が必要なほど生息数が少ないかどうかを見極めると同時に、家族で暮らしている個体がいるかどうかにも注意を払う。ビサヤイノシシは通常、メス数匹とたくさんの子供たちというグループで移動する。

「目標は、密猟でイノシシがいなくなった地域への再導入、あるいは少なくなった個体群を補うことです」と、英チェスター動物園で東南アジア向け現地プログラムを担当しているジョアンナ・ロード=マーゴノ氏は言う。ビサヤイノシシの家族を飼育している同動物園は、タララク・ファンデーションが運営する繁殖センターの支援を行っている。

「飼育下での繁殖は、残り少ない生息地で病気が蔓延した場合など、万が一のための保険にもなります」

 野生への再導入を進めるためには、イノシシの大切さについて広く知ってもらうことも重要だ。グティエレス氏は、定期的に地元のコミュニティを訪れて、子供たちに向けて話をしている。

 グティエレス氏はこの活動に、個人的な思い入れがあるという。彼はネグロス島で、両親と祖父母がイノシシを狩る姿を見て育った。「狩りをする親たちと、イノシシが消えていく現状の両方を見てきたことによって、わたしはこの島に今あるものを守ろうと思うようになりました」とグティエレス氏は言う。

 以前に比べれば、島民たちもビサヤイノシシに関心を持つようになってきたものの、農家の人々は作物が荒らされればイノシシを殺し、また密猟は厳しく禁じられているにもかかわらず、その肉は食用にされている。

「家畜のブタと交配させることもできるため、それが種の絶滅につながる可能性もあります」

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