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食堂に届いた希少な巨大スッポンを再び川へ、カンボジア

5/7(火) 7:11配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

メコン川で育む保護活動、元密猟者も参加

 2018年末のことだった。カンボジア北部の町、クラチェの人気レストランの店主のもとに、地元の漁師たちがやってきた。メコン川で生きたスッポンを捕ったので、買ってほしいと言う。店主はときどきスッポンを買って、特別なリクエストに応じて客に出していた。

【動画】希少な巨大スッポン、祈りを捧げて川へ返す

 だが、このとき漁師が持ってきたスッポンは違っていた。まず、大きい。重さが17キロ近くある。頭の幅が広く、口先の近くに両目があるところはカエルに似ていた。話に聞く絶滅危惧種ではないかと思った店主は、一瞬考えてから、カメを75ドル(約8000円)で買うことにした。料理するためではなく、死なせないためだった。

カエル顔のスッポン

 こうして、30キロ余り北のサンボーにあるメコン・カメ保護センターに、巨大なスッポンが持ち込まれた。店主の息子が持ち込んだ生き物を見て、センターを管理するブラン・シナル氏は、マルスッポンだとすぐにわかった。カンボジアでは極めて希少な種で、1メートル以上の大きさになることもあり、100年以上生きるものもいる。繁殖年齢に達したメスだということもわかった。この個体を失ったら、悲劇的だったことだろう。

 それから3カ月、シナル氏は保護センターでマルスッポンの世話をした。そしてこのほど、ある金曜の朝に、メコン川に浮かぶカオー・トロング島の手つかずの浜に連れて行った。捕獲された地点に近いところで、スッポンを川に帰すためだ。地元の当局者、村人、学生たちなど、たくさんの人が集まっていた。

 2人の仏僧が祈りを唱えてから、スッポンが地面に置かれた。スッポンは、本能的に隠れようとして砂を掘り始めた。そこに放っておくのはよくないだろうと、スッポンは再度持ち上げられて水中に放された。泳いで岸から離れていくと、学生たちが拍手を送った。

「特別な機会でした」と、シナル氏は後に語った。「親となる(マルスッポンの)個体を野生に返したのは初めてです。とてもいい兆しです」

「カエル顔のスッポン」とも呼ばれるマルスッポンは、西はバングラデシュから東はフィリピンまで広い地域で見られるが、カンボジア北部では、メコン川に沿った長さ50キロ弱の範囲にしかいない。かつては豊富にいたが、数十年にわたって卵が食用目的で乱獲されたため、個体数が激減。完全にいなくなったと考えられるまでになった。マルスッポンがカンボジアでようやく再発見されたのは2007年のことだ。

 その年、カンボジアの水産局は複数の保護団体と共に、マルスッポンの国内個体数回復を目指す事業に乗り出した。特に重視しているのが、ふ化したばかりの幼体の保護だ。2007年に見つかった3つの巣で約100匹が生まれ、保護団体が生殖間近の年齢まで育てて川に放した。

 それ以来、見つかる巣の数は年々増えているとシナル氏は話す。彼の推計では、これまでに8000匹以上の幼体がメコン川に放されているとのことだ。一方、成体の個体数はわかっておらず、今もかなり少ないままだろうと氏は続けた。「1つ1つの個体を救うことがとても重要なのは、そういうわけです」

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