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安倍首相が「増税可能な好景気」と大阪補選でアピール。参院選は消費増税を問う選挙になる!?

5/8(水) 8:33配信

HARBOR BUSINESS Online

◆「増税可能な経済状況(好景気)である」と、街宣でアピールした安倍首相

 参院選の前哨戦として注目された「大阪12区補選」の投開票前日(4月20日)。寝屋川市で、安倍首相が北川晋平候補(自民党公認)の応援演説を行った。

⇒【画像】「補選勝利で増税延期(凍結)が可能」と訴えた藤田文武候補(左・現衆院議員)と松井一郎・日本維新の会代表(大阪市長)

「(大阪で開かれる)G20の課題は何か。それは、働く場を作っていく雇用です。そして収入を上げていくということでもある。(中略。有効求人倍率だけでなく)給料も上がっています。今世紀に入って最も高い賃上げが5年連続で行われている。

うれしかったことは、中小企業、小規模事業者の皆さんの賃上げ、この20年間で最も高い水準になってきているし、パートでがんばる皆さんの時給も過去最高になっています。しっかりと雇用と作り、そして収入を増やしている」

 安倍首相の発言は、首相側近の萩生田光一・幹事長代行が4月18日に「6月の景気指標しだいでは消費増税延期もありうる」とネット番組で示唆、この問題が補選の一大争点に急浮上する中で飛び出した。そこで「アベノミクスで収入アップなどの成果が出ている」とアピールし、「増税可能な経済状況(好景気)である」と、萩生田発言の波紋を打ち消そうとしていたのだ。

 しかし、安倍首相のいう「収入(名目賃金)」は増えていても、物価上昇分を差し引いた「実質賃金」は下がっている。可処分所得を決めるのは実質賃金の方で、家計消費の力強さを示すバロメーターとして用いられるのも名目賃金ではなく、実質賃金だ。

 実際は増税困難な“アベノミクス不況”に陥っているのに、安倍首相は経済指標のすり替えで好況をデッチ上げ、「増税可能」とアピールして萩生田発言の火消しに努めたといえる。まさに不正勤労統計問題で発覚した“アベノミクス偽装”が、補選でも繰り返された形に見える。

◆「終わった話だ」麻生財務相も増税延期を否定

 しかも安倍首相は、消費増税を前提とした「幼児教育・保育の無償化」についても街宣で触れたため、TBSは「安倍首相“増税延期発言”打ち消す」と銘打って、こう報道した。

「安倍総理は、大阪での街頭演説で消費税の増税分を財源とする幼児教育・保育の無償化を10月から行うと改めて表明。『10月の増税の延期もあり得る』との考えを示し、波紋を広げている側近の萩生田幹事長代行の発言を打ち消した形です。『10月には3歳から5歳、幼児教育、保育の無償化を行います。経済的な負担を軽くして、子どもを産み育てたいという皆さんの夢を可能にしていきたい』(安倍首相)」

 安倍首相が選挙区内3か所で街宣をした4月20日には、麻生財務大臣も現地入り。北川候補と一緒に商店街を練り歩いた後、個人演説会でマイクも握った。筆者が終了後に直撃して「消費増税が争点になっていますが」と聞くと、「終わった話だ」と麻生大臣は増税延期を否定した。

◆非自民勢力は増税反対(延期)を旗印に

 萩生田発言を肯定せずに“アベノミクス好況(収入アップ)”を演出、予定通りの消費増税の方針を変えない安倍政権に対し、非自民勢力は増税反対(延期)を旗印にしていた。

 萩生田発言が飛び出した18日、寝屋川市駅前。大阪ダブル選挙勝利で勢いづく「日本維新の会」の藤田文武候補(現・衆院議員)は、街宣車の上でこう訴えた。

「(補選で)私を押し上げていただいたら『消費税の増税を吹っ飛ばせる』と言われている。(大阪12区の)寝屋川市・大東市の皆さんに、維新と藤田文武にもう一回期待をかけてもらったら、消費税の増税までドーンと吹っ飛ばせるかも知れない」

 続いてマイクを握った松井一郎市長(維新代表)も「ここで増税を許すと、高齢者の社会保障費を掲げられて大増税国家になります。増税凍結をするために藤田候補を勝たせてください」と呼びかけた。

◆家計消費、実質賃金は年々減っている

 野党統一候補の宮本岳志・前衆院議員の応援に駆けつけた共産党の志位和夫委員長も翌19日、「消費増税が一大争点になった」と強調した。

「萩生田さんは増税実施延期を『まだ間に合う』と言った。その通りです。これからでも止められる。宮本さんを勝たせていただければ、大変なインパクトを持って永田町に衝撃波が走ります。そして止めることができます」(志位委員長)

 この街宣で志位委員長は、安倍首相が実質賃金ダウンを認める答弁をしていたことについてもこう紹介していた。

「衆議院予算委員会で安倍首相と議論をしましたが、消費税8%に増税をした2010年を機に5年連続で家計消費マイナス、増税前に比べて25万円も世帯当たり減っています。働く人の実質賃金は10万円も減っている。増税なんかやれる状況ではない。

(家計消費と実質賃金の)グラフを見せて『安倍さん、水面下に沈みっぱなしではないですか』と言ったところ、安倍首相は『たしかにグラフでは水面の下に沈んでいて顔は出ていない』と認めました。

 人に例えれば、人が溺れている状態じゃないですか。そこに増税を被せるということは、溺れている人の頭を押さえつけて足を引っ張って水の底に沈めちゃうような話ではないですか。景気の底が抜けてしまうのは明らかではないでしょうか。

 安倍首相は『そうならないように、(消費増税で)いただいいた分はすべてお返しをする対策をちゃんとやります』と言う。『返すぐらいだったら最初から増税をやるな!』と言いたい」

 安倍首相の発言は、確信犯ではないか。国会では実質賃金ダウンを認めながら、街頭演説では「アベノミクスで収入アップ」という“虚偽発言”。家計消費を左右するバロメーターである実質賃金を名目賃金にすり替えて“アベノミクス不況”を粉飾(偽装)、増税延期不要な経済状況(好況)と印象づける世論工作をしたといえる。選挙中にウソを広めることを禁じる公職選挙法違反の疑いも出てくる。

◆「消費税増税に反対」の民意が大阪12区補選の結果に表れた!?

 結局、大阪12区補選は「消費増税延期(凍結)」を訴えた維新の藤田氏が約6万票で初当選。安倍首相らの支援を受けた北川氏は約4万7000票にとどまり、自民党は大阪12区の議席を失った。予定通りの増税実施を掲げる自民党公認候補に勝利したことについて、当確で喜びに沸く藤田氏の事務所で聞いてみた。

――藤田さんは「勝利すれば、消費増税延期の可能性がある」と選挙中に訴えられて、実際に当選されました。これは「消費増税延期・反対の民意を受け止めた」と考えているのでしょうか。今後、参院選の公約に掲げるなど、消費増税延期に向けて動かれるのでしょうか。

馬場伸幸「日本維新の会」幹事長:地元に帰れば、ほとんどの方が「消費税増税には反対」ということです。我が党としても一貫して「消費税の増税は凍結」ということを訴えてきていますので、それが投票の方にも広がってきているのではないか。我々は「消費税増税については反対だ」という方々の民意を汲み取っていると理解をしていますし、今後、国会でもあらゆる機会を通じて提言、要望していきたいと思っています。

藤田氏:選挙期間中も消費税増税について演説の中で話しましたが、街中の声としても反対を訴える声をたくさん聞きましたし、私個人としても党としても「消費税の増税には反対」ということで、ニュースの中でも注目度の高い選挙と私も認識したうえで、皆さんの民意にお応えしてきたつもりです。

――安倍首相が現地に入って「給料が上がってアベノミクスは好調だ」と、増税可能な状況と強調しながら応援演説をしましたが、それに対して有権者の民意は「そうではない」と答えたと捉えていいのでしょうか。

馬場幹事長:国民一人一人の懐は、いろいろな経済の数字よりも暖まっていません。高度成長時代に「所得倍増論」がありました。その時は、今月よりも来月、来月よりも来年と、給与が上がっていった。夢と希望に満ち溢れていた時代だったと思います。今は、一人一人がそういう状況になっているのかと言えば、それはなっていないと思います。

◆今夏の参院選は消費増税イエスかノーかを問う選挙になる!?

 さらに記者会見後の囲み取材で、馬場幹事長は安倍首相の「収入アップ発言」についてこう語った。

「名目賃金が上がっていても実質賃金は下がり、可処分所得は下がっている。名目賃金が上がっても可処分所得が増えないと景気はよくならない。萩生田氏が話している動画を見たが、個人的な意見ではない。安倍首相から『増税延期の観測気球を上げてこい』と指示され、原稿に沿って話したように見えた。どちらにせよ、補選勝利の追い風になったのは間違いない」

 萩生田発言で消費増税が争点として急浮上した大阪12区補選で自民公認候補が敗北したことで、今夏の参院選でも消費増税イエスかノーかを問う“アベノミクス審判選挙”になる可能性が一気に高まった。

このまま安倍政権が「収入(名目賃金)アップ」などを列挙してアベノミクス好況をアピールし続けるのか。それとも、実質賃金ダウンの“アベノミクス不況”を認めて消費増税延期へと軌道修正をするのかが注目される。

<取材・文・撮影/横田一>

ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数

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最終更新:5/8(水) 8:33
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