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夜空を横切る謎の発光現象、オーロラとの違いを解明

5/9(木) 17:42配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

新タイプの発光現象「スティーブ」はハイブリッドの天体ショーだった

 オーロラのはかない輝きは、昔から人々を魅了し、同時にその発光原理についても数多くの研究がなされてきた。しかし2016年、まったく新しいタイプの発光現象「スティーブ」が、カナダのアルバータ州で発見され、科学者たちを驚かせた。

【動画】謎の発光現象「スティーブ」

 スティーブは、長く伸びる紫色の光の帯で、ときどき杭を打った柵のような形をした緑色の光を伴うこともある。観察される場所は、典型的なオーロラよりもはるかに緯度の低い地域だ。宇宙物理学者らはこの現象について、単に珍しい形をしたオーロラなのか、それともまったく別の何かなのかを明確に特定できずにいた。

 そしてこのたび、新たな研究により、答えはおそらくそのどちらでもなく、スティーブは「ハイブリッド」であるらしいことが判明した。

「柵のような形の光はオーロラですが、弧を描く紫色の帯はオーロラではないことがわかりました」。研究の主執筆者である、米ボストン大学の宇宙物理学者、西村幸敏氏はそう語る。

 この発見が重要なのは、典型的なオーロラもスティーブも、大気中の電離層と呼ばれる領域で発生する現象だからだ。電離層で変化が起きると、地球の通信網に影響が及ぶ可能性があると、論文の共著者でカナダ、カルガリー大学の宇宙物理学者、ベア・ガラード・ラクート氏は言う。「あの空の上で何が起こっているかを理解することは、われわれの研究の根本に関わります」

オーロラなのか?そうでないのか?

 オーロラは、太陽からやってくる粒子(プラズマ)が、地球の磁力線に沿って大気中に降りてくるときに発生する。これらの粒子が大気中の粒子とぶつかると、大気の電子がいったんエネルギーの高い状態になり(励起)、それが元に戻る際に色とりどりの光を放つ。

 スティーブは、外観が大きく異なること、低緯度で発生することなどから、ごく普通のオーロラでないことは、以前からわかっていた。

 カナダで奇妙な光のショーを発見したアマチュア科学者らが、これを「スティーブ」という名前で呼ぶようになったのは、2006年のアニメ映画『森のリトル・ギャング(Over The Hedge)』に登場する動物たちが、見たことのない「生垣」に遭遇した際、これを「スティーブ」と呼ぶことにするというエピソードに由来する。

 NASAゴダード研究所の宇宙物理学者であるエリザベス・マクドナルド氏のチームは、「スティーブ」という名前を気に入り、後付けでこれを「Strong Thermal Emission Velocity Enhancement」の略称「スティーブ(STEVE)」であるということにして、正式名称に採用した。

 マクドナルド氏らは2018年、スティーブを横切るように地磁気観測衛星を通過させて得たデータの研究から、これは“新種”のオーロラであると発表した。従来のオーロラとは形成方法がわずかに異なるものの、荷電粒子の動きはほぼ同じであるというのがその理由だった。

 一方で、スティーブへの関心が高まり、この現象の過去の写真が発掘されるようになると、徐々にその詳細な姿が明らかになってきた。ガラード・ラクート氏らが2018年に発表した別の研究では、2008年に発生した、緑色の部分を持たないスティーブを精査している。その結果、このときのスティーブに見られた荷電粒子の量は、本物のオーロラには遠く及ばなかったことがわかった。

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