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父のなきがらと対面した母はその瞬間、大きな声をあげた

5/9(木) 17:30配信

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■葬式はマナーよりも実務

〈連載「母への詫び状」第四十一回〉

   お葬式のマナーを、あれやこれやと講釈しているテレビ番組を見た。

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 香典の水引は何色が正解ですとか、香典に入れるお札は新札は避けましょうとか、どうでもいい些細なことを真面目な顔で解説していたが、いざ親の葬式を取り仕切った側の率直な感想は「そこじゃない」。

 葬式のマナーで大事なこと。それは、参列者や香典を渡す人は、必ず郵便番号まできちんと記帳(記入)することだと思う。

 住所と名前だけで、郵便番号を書いていない人は、あとから香典返しやら何やらのときに、いちいち不便で面倒くさくて仕方がない。水引の色だの、お札の向きだの、そんな決まりよりもこっちがずっと重要である。

 それから香典の金額も、なるべく香典袋に書いて欲しい。誰にいくらいただいたのか、注意してメモしておかないと、お金を袋から出した時点でわからなくなってしまう。

  この辺は葬式に慣れた人には常識なのかも知れないが、初めて喪主として仕切る側に回った者はそんな手はずもよくわかっていない。マナーより実務を重んじたほうが、相手のためになる場合もある。

■葬式に人が集まるか? 

 脳出血で救急搬送され、胃ろうで命をつないだ父は、数ヶ月後に息を引き取った。

 父が亡くなったこと。それを誰にどうやって連絡すればいいのか見当もつかなかったが、教師だった父には教職員の組合のネットワークがあった。遺族が何もしなくても、葬儀には多数の方々が集まってくれた。こんなとき、社会的にまっとうな職業と、フリーライターという職業の差を感じてしまう。

 おそらくぼくの葬式は、誰にも知らせなければ、誰も来ないだろう。しかし、まっとうな職業なら、誰に知らせなくても、あるいは誰かひとりに知らせれば、人が集まる仕組みになっている。

 心配だった母も、どうにか葬儀に参列できた。車いすに座り、前半だけの短い時間ではあったが、訪れた人たちに顔を見せて、あいさつすることはできた。

 がんが背骨に転移して、上半身を起こせなくなった母は、結局、約半年もの長い期間、病院のベッドの上で寝たきりの生活を送った。

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最終更新:5/9(木) 18:15
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