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一橋大学アウティング裁判が 社会に投げかけた問題    奥野斐

5/10(金) 14:52配信

創

同級生に同性愛を暴露され……

 一橋大学(東京都国立市)法科大学院の男子学生(当時25歳)が校舎から転落死したのは、同性愛者であることを同級生が暴露(アウティング)したことに対して大学が適切な対応を取らなかったためなどとして、愛知県在住の両親が大学に約8500万円の損害賠償を求める訴訟を起こしていた。しかし今年2月、東京地裁は「大学が適切な対応を怠ったとは認められない」として原告の請求を棄却した。両親は同級生にも損害賠償を求めていたが、昨年1月に和解している。
 アウティングは、「LGBT」など性的少数者の存在が広く知られるようになり、カミングアウト(性的指向などを自ら打ち明けること)とセットで語られることが増えてきた。
 まずは、事件の経緯を振り返ろう。判決文などによると、一橋大学法科大学院の3年次だった男子学生(以降A君)は、2015年8月24日午後、校舎6階から転落、搬送先の病院で死亡が確認された。
 A君は亡くなる約4カ月前の15年4月、同級生に恋愛感情を告白した。同級生は当初、「付き合うことはできないけど、これからもよき友達でいて欲しい」とメッセージを送った。しかし、2カ月後の6月下旬、同級生9人が参加する無料通信アプリ「LINE」のグループに「おれもうおまえがゲイであることを隠しておくのムリだ。ごめん」と投稿。これがアウティングにあたる。
 当時のLINEの画面では、同級生の暴露の書き込みから8分後、A君が「たとえそうだとして何かある?笑」と投稿し、その1時間20分後、再び「これ憲法同性愛者の人権くるんじゃね笑」と書き込んでいる。2人のやりとりの間に他の同級生の発言はない。
 最初に断っておくが、私は和解が成立している同級生やLINEグループにいた他の同級生に取材できていない。彼らがどんな思いで投稿したのか、なぜフォローしなかったのか、聞いてみたいが、難しいのが現状だ。また、同級生らを責めてもこの問題の本質は解決しないだろう。アウティングが脅威になる社会の、人々の中にある差別や偏見をなくしていくことが、悲劇を繰り返さないために必要だと考えている。

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最終更新:5/20(月) 16:48

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