ここから本文です

日本独自のパン文化が花開いた訳

5/10(金) 17:36配信

nippon.com

阿古 真理

全国各地で「パン祭り」が開催され、都心の高級食パン店には毎日行列ができる。パンの人気は絶大だ。総菜パンや菓子パンなど、日本で欧米とは違う多様なスタイルのパンが生まれた背景を考察する。

リーマンショック以降続くパンブーム

日本でパンブームが始まったのは、2008年のリーマンショックの後のことだ。その少し前まではスイーツブームが続いていた。人気があったのは、ムースやフルーツ、スポンジ生地など、複数の層をなす生ケーキだった。複雑な味わいでとてもおいしいが、手間と材料費の分だけ値段も高い。また、ケーキはきちんとテーブルについて食べるなどシチュエーションを選ぶ。

一方、パンは安く、どこででも手軽に食べられる。買ったその日に食べないといけない生ケーキと異なり、冷凍保存もできる。そんな気軽さが、不況に見舞われた人々にパンを魅力的に見せたのだろう。

10年たった今もブームが続くのは、消費者側と作り手側の両方に理由があるからだ。消費者側の大きな要因は、人気のパンとパン屋に関する情報が増えたこと。

最初にパンマニアたちの情報発信があった。1990年代からパンマニアたちが仲間でパン屋巡りをし、ブログなどで発信し始めている。マスメディアがパン情報を発信することは時々あったが、ブームのきっかけを作ったのは、人気の首都圏情報誌の『Hanako』(マガジンハウス)が、2009年11月12日号で「東京パン案内。」という特集を組んだことだ。不況で財布のひもは締めたいがおいしいものを食べたい、という矛盾した欲求を抱える人々に「そうだ、パンがあった」と気付かせたのではないだろうか。

日本各地で「パン祭り」

ブームを加速させたのは、人気店のパンを集めて売るイベントである。東京・三宿で2011年10月から「世田谷パン祭り」が始まった。13年からは東京・表参道の国連大学の前で、年に数回「青山パン祭り」(*文末参照)が開かれるようになり、どちらも盛況だ。

パンイベントは地方でも開催されている。1842年に日本で初めてパンを作った蘭学者、江川太郎左衛門(坦庵)を記念した静岡県伊豆韮山の「パン祖のパン祭り」は2007年から開かれている。また、東京でのパンブームが波及し、埼玉県川越市で「川越パンマルシェ」(*文末参照)、神戸市で「神戸パン祭り」が開かれるなど、各地でパンイベントが開催されるようになってきた。

神戸、京都、大坂など関西ではパンの消費金額が関東を上回る。大阪では、梅田の阪神百貨店の食品フロアを皮切りに、人気店のパンを集めたセレクトショップが次々とオープンしている。

雑誌やテレビなどでもひんぱんにパン特集が組まれ、個人もSNSを通じて情報交換をしている。ブームが盛り上がるのは、新しいスタイルのパン屋の登場とともに、高い技術力を誇るパン職人が増えたからだ。これが作り手側の要因である。

1/3ページ

最終更新:5/10(金) 17:36
nippon.com

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事