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その中心に「長谷部誠がいた」こと。チェルシーすら互角。日本人こそ語り継ぐべきフランクフルトの躍進

5/10(金) 12:07配信

フットボールチャンネル

ヨーロッパリーグ準決勝2ndレグ、チェルシー対フランクフルトが現地時間9日に行われた。1stレグ、2ndレグともに1-1となり、PK戦に委ねられた一戦は、チェルシーの勝利で幕を閉じた。それでも、フランクフルトで長谷部誠が見せた奮闘は語り継ぐべきものだった。(文:本田千尋)

●リベロではなくボランチ。長谷部の役割

 120分間の死闘の末…夢は潰えた。5月9日に行われたヨーロッパリーグ(EL)準決勝2ndレグ。1stレグを1-1で折り返したアイントラハト・フランクフルトは、敵地スタンフォード・ブリッジでチェルシーを相手に堂々と渡り合った。

 序盤は連動したハイプレスと、時にファウルも厭わないハードな守備で主導権を渡さなかったフランクフルト。何が何でも決勝に行く。そんな気概が伝わってきた。だが、ELもCLに負けず劣らず、準決勝の2ndレグは甘くない。

 20分も過ぎるとチェルシーもギアを上げ、1stレグで長谷部誠が感じた「クオリティの高さ」を発揮。右サイドでウィリアンがシモン・ファラッテとセバスチャン・ローデの2人をかわし、オリヴィエ・ジルー、エデン・アザールと繋いで中央からフランクフルトを脅かす。

 24分、チェルシーに与えた直接FK。ウィリアンが蹴ったライナー性のボールを、ダヴィド・ルイスがフリック。ラインを割るすんでのところで長谷部がクリア。辛うじて難を逃れた。だが、ゴール間際でスーパーな守備が飛び出すということは、それだけ危機が本格化している、ということでもある。29分、とうとうフランクフルトは失点。アザールのパスに抜け出したロスタフ=チークにゴールを許した。

 1stレグに引き続き、長谷部はボランチのポジションで出場する。リベロではなく中盤の底で起用された理由は、第1戦と変わらないだろう。ホームで引き分けた後で長谷部は、長身かつ屈強な敵のCFジルーに対してフィジカル面で分が悪いため、代わってマルティン・ヒンターレッガーが3バックの中央に配置されたと語った。

 そして自らの役割については、次のように話している。

●フランクフルトの強みが互角の展開に

「自分が中盤に入ることで、もう少しゲームを落ち着かせたり、自分のところでボールをセイフティに、ゲームを組み立てるという意図があったと思う」

 そうした「意図」は、2ndレグでも踏襲されたようだ。「経験のある選手」として、後方で冷静にボールを動かした。さらにドリブルでハーフウェイラインを越え、サイドに展開するなど、積極的に「ゲームを組み立てる」。

 後半に入って、同点弾を呼び込んだのは、そんなベテランの日本人MFが蹴った1本のパスだった。49分、中央をドリブルで上がって、前線のルカ・ヨビッチにふわりとボールを入れる。セルビア代表FWが落とすと、ミヤト・ガチノヴィッチがダイレクトで前に出す。ぽっかり空いたスペース。ヨビッチがゴールの左隅に突き刺した。

 試合を振り出しに戻したことで、息を吹き返したフランクフルト。ギアを入れ直す。前半に比べて少しトーンダウンしたチェルシーに対し、ドイツからやって来た挑戦者たちの運動量は衰えない。

 長谷部は自陣のゴール前で固い守備に貢献し、フィリップ・コスティッチとダニー・ダ・コスタは左右両サイドから果敢に攻め、アンテ・レビッチは前線で体を張った。1stレグを終えて長谷部が話した、チェルシーに無くてフランクフルトにある強み=「チームとして戦う部分」で、敵に主導権を渡さなかった。

 そして激闘は延長戦に突入する。負傷離脱していたセバスティアン・アレアが復帰したことで、再獲得した高さという強みを活かしながら、なおもフランクフルトはチェルシーを相手に互角の戦いを続けた。

 長谷部も奮戦した。ミスパスから強烈なカウンターを食らう場面もあったが、90分を終えても運動量は落ちず、バイタルエリアに蓋をする守備の固さは相変わらず。守護神ケヴィン・トラップも攻守を見せ、延長戦はスコアレスに終わり、勝負の行方はPK戦に委ねられることになった。

●ヨーロッパの最前線で光り輝く1人の日本人

 フランクフルトは1人目のアレアと2人目のヨビッチが成功。チェルシーは2人目のセサル・アスピリクエタが失敗…決勝の舞台が近づいた。だからこそ、フランクフルトに重圧がのしかかったのかもしれない。

 4人目のヒンターレッガーは、正面にやや勢いなく蹴ってしまい、5人目のゴンサロ・パシエンシアが左に蹴ったボールは止められてしまう。対するチェルシーの5人目はアザール。役者がきっちり決めて、ここにフランクフルトが1歩1歩刻んできたELの戦いに、終止符が打たれることになった。

 準決勝で敗退することにはなったが、チェルシーを相手に限りなく決勝に近付いたことは、讃えられて然るべきことだろう。振り返ればグループリーグではマルセイユやラツィオを退け、決勝トーナメントに入ってからは、シャフタール、インテル、ベンフィカといった欧州の名門を相手に勝ち上がってきたのだ。このフランクフルトは、ドイツサッカーの歴史に名を刻んだといっても過言ではないだろう。

 そして、これから長く語り継がれていくであろうチームの中心に長谷部がいることは、サッカーに関係ある/なしに、日本人にとって誇らしいことではないだろうか。日本代表から退き、35歳というベテランの領域に突入しながらも、ヨーロッパというフットボールの最前線で、光り輝く1人の日本人選手がいる。

 18/19シーズンのELで、長谷部がリベロとして見せた圧巻のパフォーマンス、ベンフィカやチェルシー相手に劣勢の中でも奮戦する姿…。欧州の舞台で魅せたプレーの数々は、フランクフルトのファンだけでなく、何より日本人こそが後世に語り継いでいくべきものである。
 
(文:本田千尋)

フットボールチャンネル

最終更新:5/10(金) 18:22
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