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尾上菊之助が語る、歌舞伎舞踊の大曲『京鹿子娘道成寺』の楽しみ方

5/11(土) 11:00配信

T JAPAN web

入門者から上級者まで、 歌舞伎の世界をひも解く“歌舞伎への扉”

 美しい女方が大きな鐘の上でポーズしている姿や、衣裳が一瞬にして鮮やかに替わる様子、歌舞伎舞踊『京鹿子娘道成寺(きょうかのこむすめどうじょうじ)』は、写真や映像などを通してそのビジュアルを目にしている人は多いのではないだろうか。豊かな色彩美と心躍る音楽のなかで夢のようなひとときを味わえるその踊りは、まさに歌舞伎の華。いくつものパートが組曲のように連なりすべてを上演すれば1時間を超える大曲であることもあり、晴れの舞台で中心に立てるのは限られた者のみだ。それが歌舞伎座となればなおさらである。

 多くの歌舞伎舞踊には物語があり、『京鹿子娘道成寺』で描かれているのは紀州の道成寺で起こった出来事だ。長らく消失していた寺の鐘が再建され、その鐘供養の日に花子という美しい白拍子が寺を訪れることから始まる。花子を踊るにあたり、芝居として最も大切なのは、何なのだろうか。「鐘への想いです。実際に振りとして鐘を見込むところはもちろん、そうでない時も常に心と視線の先には鐘があります」。

 実はこの物語はある伝説の後日譚となっている。その伝説とは、恋への妄執から蛇体と化した娘が、道成寺の鐘に逃げ込んだ相手の男を鐘もろともに焼き滅ぼしてしまったというもの。その娘の名を清姫といい、花子の正体は実は清姫の霊、そして鐘は愛おしくも憎い恋の相手そのものなのだ。

 初めてこの舞踊に取り組む尾上菊之助さんが、主人公である“白拍子花子 実は清姫の霊”を初めてつとめたのは20年前のことだった。「まずは何よりの課題は、道行(註)に始まるさまざまな踊りを最後まで踊りきる、ということでした」。所化(寺の僧)たちによる場面も挿入されているものの、メインの演者は長丁場をほぼひとりで踊りぬかなければならない。確かな技術とペース配分をコントロールできる体力が要求される踊りなのだ。

 瑞々しい若さでファースト・ステップをクリアした当時21歳の菊之助さん。だが、その2年後に、『道成寺』のバリエーションである『京鹿子娘二人道成寺(きょうかのこむすめににんどうじょうじ)』を父である尾上菊五郎さんと踊り、衝撃を受ける。「自分の実力の至らなさを実感しました。どうすれば父のように身体を遣えるのか、細かい技術的なことを改めて教えていただきました」

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最終更新:5/11(土) 11:00
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