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Nスペで話題沸騰 「ペニシリン以来の大発見」脊髄損傷を直す新治療が保険適用へ

5/11(土) 6:00配信

文春オンライン

 その治験の動画を札幌医科大学で初めて観た時の衝撃は忘れがたい。

「右手動きますか?」

【写真】「ペニシリン以来の大発明」と評される本望修・札幌医大教授

「左足動きますか?」

 そう医師から尋ねられたベッドの男性は手足を動かすことができなかった。事故で脊髄を損傷し、首から下の四肢が麻痺していたからだ。男性はいわゆる“寝たきり”の状態だった。

 尋ねられたあと、男性はある点滴を投与された。

 すると、その翌日、劇的な変化が起きた。それまで麻痺していた手足がいきなり動きだしたのだ。それどころか、その日のうちに自分で車椅子を操作するという段階にも至った。

 半年後、男性は自分の足で退院していった。

 動画に収められていたのは、まるで魔術のような治療だった。

 この医療を実現したのが、本望修・札幌医大教授だ。本望氏は、「間葉系幹細胞」という患者自身の細胞を使うことで、自己治癒力を引き出す治療を導き出した。

 脊髄損傷は、不慮の事故などで誰もが突然見舞われる可能性があるものだ。国内で年間約5000人が新たに患者になり、慢性期患者は累計10万人ほどにのぼると言われる。だが、従来は傷ついた神経の機能を回復させるのは難しく、リハビリテーション以外に有効な治療法はなかった。重い後遺症を抱えれば、車いすや寝たきりの生活が続くのが常だった。

 本望氏が確立した間葉系幹細胞の治療法は、同じ病院の医師からさえ「自分の目で見るまではどの程度効果があるのか」と疑問に思われていた部分もあった。しかし、効果と安全性を証明するための治験を行うと、ほぼ全ての患者が劇的な回復を見せた。

 同大学では本望氏の主導で、脊髄損傷と同じ間葉系幹細胞の製剤による脳梗塞の治験も2013年から進行している。さらに今後、ALS(筋萎縮性側索硬化症)といった神経難病や、アルツハイマー病などにも適応拡大できる可能性があるとの指摘もある。

 目下、脊髄損傷に対する新しい治療として、iPS細胞を用いた臨床研究も進められようとしている。ただし、臨床研究は学術的に安全性や有効性を確認するのが主たる狙いで、一般の医療として利用されるのには、しばらく時間がかかる。だが、この札幌医大の間葉系幹細胞を用いた脊髄損傷への医療は、すでに安全性も有効性も国から認められたものだ。この春からは急性期に限ったものではあるが、公的医療保険も認められた。

 これほどめざましい成果が、なぜ大々的に報じられてこなかったのかと疑問に思う向きもあるだろう。本望氏は言う。

「今まであまり語ってこなかったのは、苦しんでいる患者さんの期待を高めるように無駄に煽りたくなかったから」

 実はこの取材も3年前、本望氏に依頼した際には、断られている。

 驚異的な回復をみせる様子はNHKスペシャル「寝たきりからの復活~密着!驚異の『再生医療』~」(5月4日放送)でも話題を呼んだが、月刊 「文藝春秋」6月号 では、今月からの患者受け入れを目前に実現した、本望氏のロングインタビュー「脊髄損傷は治療できる 札幌医大『奇跡』の発見」を掲載。これまでの本望氏の研究をたどりつつ、脊髄損傷や脳梗塞の後遺症である半身不随、あるいは高次脳機能障害などの回復の具体例、そのメカニズムについて、詳細に語ってもらった。また、今後の医療経済へのインパクトなどにも触れている。

 本望氏自身は決して誇示しないが、我々がこの治療の客観的評価を尋ねた識者はこう表現した。「ペニシリンを発見したフレミング以来の大発見」だ、と。インタビューで語られた数々の事実からは、これが決して大げさな表現ではないと実感してもらえるだろう。

森 健,秋山 千佳/文藝春秋 2019年6月号

最終更新:5/13(月) 11:39
文春オンライン

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